上杉重定

上杉重定：米沢藩を支えた陰の立役者

上杉重定（うえすぎ しげさだ）は、江戸時代中期の大名であり、出羽国米沢藩の8代藩主。山内上杉家24代当主として、激動の時代を生きました。

生涯

享保5年（1720年）に5代藩主・上杉吉憲の四男として生まれた重定は、二人の兄が相次いで亡くなった後、延享3年（1746年）に家督を相続しました。同年、元服して徳川家重より偏諱を受け、重定と名乗ります。米沢藩は、度重なる減封により財政が逼迫しており、重定は藩政立て直しに苦心することになります。

寛延3年（1750年）以降、藩士からの半知借り上げが常態化。宝暦3年（1753年）には領地替え、寛永寺中堂普請手伝いによる出費、宝暦5年（1755年）には大凶作と、困難が続きます。宝暦10年（1760年）には青苧騒動も発生し、藩内は混乱を極めました。

重定は、奉行の清野内膳秀佑や側近の森平右衛門利真に藩政を任せましたが、領民の反発を招き、宝暦13年（1763年）には森平右衛門が暗殺されるという事件も起こります。藩財政は依然として苦しく、重定は幕府に藩土返上を相談するも、諌められ取り下げました。

このような状況の中、重定は宝暦9年（1759年）に秋月種美の次男・松三郎（後の上杉治憲、鷹山）を養子に迎えました。明和元年(1764年)には細井平洲を招き、治憲と共に講義を受けさせています。

明和4年（1767年）、重定は多病を理由に治憲に家督を譲り隠居。その後、鷹山の改革により米沢藩は再建へと向かいます。隠居後は米沢に移り住み、南山館、後に偕楽館で過ごしました。天明3年（1783年）の南山館焼失と偕楽館新築は、藩財政に更なる負担をかけました。

寛政10年（1798年）、重定は79歳で生涯を閉じました。

人物

重定は、政務への関心が薄く、家臣に政治を任せる傾向がありました。しかし、鷹山が厳しい倹約令を出した際には、反対派の家臣を処罰するなど、陰ながら改革を支持しました。次男の治広が藩主になった際には、隠居した鷹山に藩政後見を依頼したとされています。

華美な生活を好んだため、藩財政を悪化させた一面もありました。鷹山の倹約改革も及ばず、重定は隠居後も贅沢な暮らしを続けました。しかし、鷹山は重定に孝養を尽くし、天明7年（1787年）に重定が重体になった際には、喪中にもかかわらず江戸から駆けつけ看病しました。

金剛流能楽を愛好し、鷹山は金剛流宗家を米沢に招いています。藩主家家財売却の際、鷹山は重定の愛好する能に関するものを後回しにするよう配慮したというエピソードも残っています。

系譜

父：上杉吉憲
母：山中氏
養父：上杉宗房
正室：豊姫 - 徳川宗勝の娘
子女：幸姫（上杉治憲正室）、上杉勝熙、上杉治広、上杉勝定、内藤信政
養子：上杉治憲 - 秋月種美の次男

上杉重定は、必ずしも名君とは言えませんが、鷹山という傑出した後継者を迎え、その改革を支えたことで、米沢藩の歴史に名を刻みました。その人物像は、一筋縄ではいかない複雑さを持ち合わせています。

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