菅谷館

菅谷館跡：畠山重忠ゆかりの城館

菅谷館跡は、埼玉県比企郡嵐山町にある中世の城館跡で、別名菅谷城とも呼ばれています。1973年に国の史跡に指定され、2017年には続日本100名城にも選定されました。現在は埼玉県立嵐山史跡の博物館が併設されており、歴史を学ぶことができます。

歴史

菅谷館は、鎌倉幕府の有力御家人であった畠山重忠の館跡として知られています。畠山氏は、重忠の父である畠山重能の代から大里郡畠山荘の荘司であり、重忠も当初は同荘内に館を構えていました。その後、鎌倉街道の要衝である菅谷の地に移り、館を構えたのが始まりとされています。

1205年に畠山重忠が武蔵国二俣川で戦死した後、畠山氏の名跡は足利義純の子孫に伝えられたとされていますが、15世紀後半に至るまでの詳細は不明です。

1488年には、菅谷館のそばの菅谷原で山内上杉家と扇谷上杉家が激戦を繰り広げました（須賀谷原合戦）。その際、山内上杉顕定の命を受けた太田資康が、扇谷上杉方の拠点である河越城に対する抑えとして、菅谷の旧城を再興しました。「長享の乱」と呼ばれる一連の戦乱は山内上杉方の勝利に終わり、敗れた扇谷上杉朝良が一時菅谷城に幽閉されたと伝えられています。以後、16世紀前半まで山内上杉家の拠点として使用されました。

その後、1546年の河越夜戦以降にこの地域に進出した後北条氏によって戦国末期まで使われ、小泉掃部助が城代として守備していました。

中世城郭研究家の中田正光氏は、当時の最前線であった松山城を強化する必要から、付近の青鳥城や杉山城と共に菅谷館も築城拡大されたと指摘しています。全周を覆う堀には多くの折りが使用され、虎口には全て横矢が掛かる仕様、威圧感を兼ねた櫓、馬出しの併用、相互援助が想定された曲輪間の作り、外郭を予想される広大な縄張り等の特徴から、後北条氏による実戦的な城郭の特徴がみられると述べています。ただし、過去の発掘調査の結果では後北条氏時代の遺物が出土していないため、杉山城と同様に後北条氏進出以前に廃城になったという説もあります。今後の調査で新たな発見があるかもしれません。

構造

菅谷館跡は、都幾川と槻川の合流点北側の低台地に位置する平城です。館の付近を鎌倉街道上道が通っていました。館跡中央のやや南寄りに平面長方形の本郭があり、その北側に二の郭、三の郭などが配置され、それぞれの郭は土塁と堀で防備されています。土塁の遺存状況は良好であり、郭の配置や土塁の構築法には近世的な平城の特徴が見られます。本郭は単郭式の城館の面影をよくとどめており、鎌倉時代における菅谷館の中心部分と考えられています。中世館跡の遺構例としては稀少な遺跡であり、保存状態も良好です。

史跡指定

1973年5月26日、「菅谷館跡」として国の史跡に指定されました。1976年12月には、未指定となっていた東側堀跡の一部が追加指定されました。2008年3月28日には、松山城跡、杉山城跡、小倉城跡が追加指定され、指定名称が「比企城館跡群」に変更されました。

アクセス

所在地：〒355-0221 埼玉県比企郡嵐山町大字菅谷
交通手段：
東武東上本線武蔵嵐山駅西口から徒歩約13分
関越自動車道東松山ICから車で約10分
* 関越自動車道嵐山小川ICから車で約10分

菅谷館跡は、鎌倉時代の面影を残す貴重な史跡であり、歴史好きにはたまらないスポットです。ぜひ一度訪れてみてください。

もう一度検索