杉山城

杉山城（初雁城）とは

杉山城は、埼玉県比企郡嵐山町にある山城です。市野川の左岸に位置し、その歴史は多くの謎に包まれています。

概要

築城者や年代は不明ですが、地元では金子主水による築城という伝承があります。縄張りの緻密さから後北条氏による築城説が有力でしたが、発掘調査の結果、山内上杉氏時代の城である可能性が高まっています。

この縄張りを巡る城郭史的観点と考古学的観点の相違は「杉山城問題」と呼ばれ、文献史学的観点も加わり、議論が深まっています。2017年には続日本100名城に選定されました。

2008年には、菅谷館跡、松山城跡、小倉城跡と共に「比企城館跡群」として国の史跡に追加指定されました。

検出遺構

曲輪、堀、土塁、井戸跡などが確認されています。2002年から2006年にかけての調査では、遺構面は1面のみで、時期差を示す層位は確認されませんでした。

本郭: 土塁、溝、石列が確認。東虎口には「ハ」の字状に広がる構造があり、幅1.8mの石積みが見つかりました。
井戸郭: 本郭南虎口の対岸に位置し、8m×6mの台状遺構と柵跡と思われるピットが検出されました。
南2の郭: 南虎口に関連する施設跡と思われるピットが2基確認されました。
南3の郭: 石敷き状の礫が部分的に確認されました。

出土遺物

本郭

かわらけ、火鉢、擂鉢、銭貨、常滑産陶器、瀬戸美濃産陶器、青花皿など3,759点が出土。多くが焼けた壁土の破片や炭化物と共伴していました。

南2の郭

かわらけ、火鉢、擂鉢など781点が出土しました。

南3の郭

かわらけ、常滑甕など107点が出土しました。

杉山城問題

築城を山内上杉氏によるものとする根拠として、以下の点が挙げられます。

出土遺物の様式が15世紀後半から16世紀前葉を示す。
山内上杉氏関連遺跡から出土する特徴的なかわらけが出土。
16世紀中葉以降の後北条氏時代の遺物が出土しない。
遺物が焼けた壁土の破片と共伴して出土し、遺構と遺物の同時性が示唆される。
『足利高基書状写』に「椙山之陣」の記述があり、書状が河越夜戦以前の史料である。

しかし、商品である陶磁器の流通タイムラグや、前線基地への最新生活用品の搬入が想定しにくい点、松山城のような例を考慮すると、出土遺物のみで年代を決定することには慎重な意見もあります。縄張り研究からも、同時期の他の城との技術的相違や「椙山之陣」の構造が当時の陣のあり方にそぐわない点から、後北条氏の築城の可能性も指摘されています。

一方で、縄張り研究者も縄張りから築城主体や築城年代を断定できないことを認めています。

また、杉山城を山内上杉家の家宰・長尾顕忠の居城とする説も存在します。

アクセス

所在地: 埼玉県比企郡嵐山町杉山614番地外
関越自動車道 嵐山小川インターチェンジから約0.5km

参考文献

村上伸二「発掘調査からみた杉山城跡」『3館連携シンポジウム・後北条氏の城－合戦と支配－』所収、2008年
西股総生 『杉山城の時代』 KADOKAWA〈角川選書592〉、2017年

関連項目

日本の城一覧
関東の史跡一覧
足利高基

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