菩提所観音寺跡

菩提所観音寺跡について

菩提所観音寺跡（ぼだいしょかんのんじあと）は、広島県広島市安佐北区三入にある、安芸熊谷氏の菩提寺だった観音寺の跡地です。この場所は、広島県において「熊谷氏の遺跡（伊勢が坪城跡・高松城跡・土居屋敷跡・菩提所観音寺跡）」として指定された貴重な史跡です。

沿革

観音寺は承久3年（1221年）に起きた承久の乱の後、安芸国三入庄に入部した熊谷氏によって設立されました。特に第5代当主・熊谷直明が応永8年（1401年）に僧・空坦を招いて創立した正法山観音寺は、当時非常に規模の大きい寺院でした。永正14年（1517年）には室町幕府の勅使である上野信孝が宿泊し、また天文10年（1541年）からの月山富田城の戦いでは、周防・長門国の大名、長期にわたって逗留していた大内義隆もこの寺院を利用しました。

熊谷氏が毛利氏の家臣となり、勢力を拡大する中で観音寺も栄えたものの、天正19年（1591年）に広島城が完成すると、熊谷氏は広島城下に移住を余儀なくされました。関ヶ原の戦いでは毛利氏が西軍に味方し敗北したため、熊谷氏は長門国萩へ移り、観音寺は次第に寂れて廃寺となってしまいました。しかし江戸時代に入っても、長州藩士であった熊谷氏の当主は家臣に墓参りをさせるなど、寺そのものは廃れても墓の管理を続けていました。

概要

現在の菩提所観音寺跡は、三入高松城の麓、根の谷川の西側に位置し、観音寺山の東側に築かれています。 この寺院は巨石を用いた石垣によって防御され、当時は観音寺山にあった観音寺山城によって拠点として機能していました。また、対岸の土居屋敷は熊谷氏の支配の大きな拠点の1つでありました。

現在は、熊谷氏の家紋である穂矢を刻んだ古い須弥壇が安置されている観音堂や、長さ100メートルを超える巨石の石垣がその名残を示しています。本尊は室町時代初期の作品とされる如意輪観音座像であり、観音寺の脇寺には迎接院、正蹄院、蓮花院、龍窓院、地蔵院、難波院、清専院、正喜院、明覚寺、谷の坊、勝円寺、恵法院などが存在しました。

境内の南側には熊谷氏の墓所があり、大体50基に及ぶ古い五輪塔や宝篋印塔が見られます。また、永正14年（1517年）に起こった有田中井手の戦いでは、当主の熊谷元直が討死しました。この出来事に関連して、元直の妻が自ら夫の遺体を探しに行き、その重さに泣く泣く右腕を切断して持ち帰ったという伝説が残っています。この腕を洗った井戸も現在に残っていると言われています。

ギャラリー

菩提所観音寺跡には、安芸熊谷氏の歴代当主に関連する五輪塔があり、それぞれの当主がこの場所に埋葬されていると伝えられています。具体的には次のような人物たちです：熊谷直経、熊谷直明、熊谷在直、熊谷信直、美濃守、熊谷堅直、熊谷宗直、熊谷膳直、熊谷元直、熊谷信直、熊谷高直などです。

1935年（昭和10年）には、熊谷氏の末裔によってこの地点が発掘・整備され、その後県の史跡として指定されました。初めての指定は1951年（昭和26年）4月6日であり、1970年（昭和45年）1月30日に追加指定や名称変更が行われ、他の関連遺跡とともに「熊谷氏の遺跡」として一括指定されています。

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