菱葩餅

菱葩餅（ひしはなびらもち）は、別名「花びら餅」とも呼ばれる、新年の祝いの席に欠かせない和菓子です。その特徴は、ごぼうと味噌あんを菱形の紅色の餅で包み、さらに円形の白い餅または求肥で二つ折りにした独特の形状にあります。この美しい姿は、平安時代の宮中における新年行事「歯固め」に起源を持つとされています。

歴史

「歯固め」とは、正月の1日から3日にかけて長寿を願って固いものを食する儀式で、大根、瓜、猪肉、鮎の塩漬けなどが用いられていました。江戸時代になると、宮中に菓子を納めていた川端道喜の記録には、薄く伸ばした白い餅（葩餅）の上に赤い菱餅を敷き、その上に押鮎（塩鮎）を乗せたものが記されています。これが次第に簡略化され、葩餅に菱餅、押鮎に見立てたごぼう、味噌を挟んだ現在の形になったとされています。

餅と味噌の組み合わせは雑煮にも似ており、菱葩餅は「宮中雑煮」あるいは「包み雑煮」とも呼ばれることもありました。また、その形状が花弁に似ていることから「花びら餅」の名でも親しまれるようになりました。この菓子は、当初は公家に配られていたとされています。

明治時代には、裏千家十一世家元玄々斎が初釜の際に用いることを宮中から許可され、新年の菓子として広く知られるようになりました。これをきっかけに、日本各地の和菓子店でも独自の工夫を凝らした菱葩餅が作られるようになり、今日に至っています。

当初、菱葩餅にはごぼうが2本用いられていましたが、現在では1本のものが主流となっています。

関連

菱葩餅は、茶道の世界でも重要な役割を果たしており、初釜などの特別な茶席で用いられます。

出典

岡田哲『たべもの起源事典 日本編』筑摩書房、2013年、599頁。ISBN 9784480095237。
中山圭子『事典和菓子の世界』（増補改訂版）岩波書店、2018年、119-120頁。ISBN 9784000612593。

外部リンク

梅の花びらを模ったお餅で新年を寿ぐ　―御菱葩（川端道喜）
「花びら餅について、詳しく知りたい。」（岡山県立図書館）

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