葉群

葉群（よう ぐん、イェ・チュン、1917年 - 1971年9月13日）は、中華人民共和国の政治家であり、党副主席を務めた林彪の妻である。林彪事件において、夫や息子らとともにモンゴルで航空機事故により命を落とした。原名は葉静宜である。

国民党の将軍とその愛妾の間に生まれたとされる。1935年に北京師範大学附属中学を卒業。青年期には北京で教師を務め、抗日運動の一つである一二・九運動にも参加した。その後、中国共産党の革命根拠地である延安へ赴き、党に入党。延安では中国女子大学の職員を務め、当時の人々からは「延安八大美女」の一人に数えられたという。

抗日戦争の後半期に林彪と結婚し、林立果、林立衡という二人の子供をもうけた。葉群は夫である林彪を、かつての戦争時代の別名から取って「一〇一」と呼ぶことが多かったという。

文化大革命が始まると、葉群は夫の地位上昇に伴い政治の中枢に関わるようになった。全軍文革小組のメンバーおよび副組長、林彪弁公室主任、中央軍弁事組のメンバーといった重要な役職を歴任。劉少奇や鄧小平といった実権派が失脚した後、1969年の第9期1中全会で党政治局員に選出された。病弱で内向的だった林彪に代わって、複雑な党務や他者との交渉を担うことが多く、その優れた交際能力や事務処理能力は広く認められていた。林彪が党内で高い地位を確立できた背景には、葉群のこうした内助の功が大きかったと考えられている。

しかし、翌1970年、第9期2中全会での出来事を機に毛沢東と林彪の間に亀裂が生じると、葉群は夫の後継者としての地位を盤石にするための政治活動を積極的に展開したとされる。さらに、息子である林立果と共に毛沢東の暗殺やそれに続く武装蜂起の計画を策定したとも伝えられている（この計画は「五七一工程紀要」と呼ばれ、「武装起義」と同じ発音であることに由来する）。

1971年9月12日、この毛沢東暗殺計画が露見したとされる。同日深夜、葉群は夫や息子らとともに、河北省北戴河の山海関空港からトライデント256号機に搭乗し、中国からの逃亡を図った。しかし、その航空機は翌9月13日未明の午前2時過ぎ、モンゴル人民共和国ヘンティー県イデルメグ村付近で墜落。葉群を含む搭乗者全員が死亡した。この事件は「林彪事件」として知られている。

葉群の死後、中国共産党中央委員会は1973年8月20日に「林彪の反党派閥の反革命犯罪の調査に関する報告」を発表。林彪と共に葉群を党から永久追放し、彼女が有していた全ての役職を剥奪することを正式に決定した。

葉群の人物像については、複雑な側面が伝えられている。健康上の問題を抱えていた林彪との夫婦生活はかなり以前から形骸化しており、1970年頃には林彪の部下であった黄永勝と密かに交際していたとされる。この関係は林家の秘書や服務員の間では公然の秘密となっており、娘の林立衡との関係が悪かった一因とも言われている。一方で、息子である林立果との関係は良好だったとされるものの、服務員によれば、林立果は葉群を「お母さん」とは呼ばず、普段は「主任」、機嫌が悪い時には陰で「葉のデブ」と呼んでいたという証言もある。他方で、葉群を質素かつ有能で飾り気のない人物だったと肯定的に回想する人々も存在する。林彪グループの人物像は、事件後、中国共産党中央が意図的に彼らを貶めるために流布した情報が多く含まれている可能性が指摘されており、葉群を含む彼らの真の姿については、今後のより客観的な研究を待つ必要がある。

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