林立果

林立果

林立果（りん りつか、1945年12月23日 - 1971年9月13日）は、中華人民共和国の軍人です。中華人民共和国元帥であり、かつて毛沢東の後継者と目された林彪を父に持ち、母は葉群、姉は林立衡です。幼い頃は「虎」と呼ばれていました。

北京大学物理学部に進学しましたが、文化大革命の波の中で中退し、1967年に人民解放軍空軍に入隊します。空軍司令部弁公室秘書を務めた後、短期間で中国共産党に加入しました。

彼の昇進は極めて異例の速度で進みました。1969年10月7日には、父・林彪の意向を受けた空軍司令官 呉法憲 の手配により、わずか20代半ばで空軍司令部弁公室副主任兼作戦部副部長という要職に就任します。当時の人々は、彼の驚くべきキャリアパスを揶揄して「一年で兵になり、二年で党員、三年で副部長、四年で上皇となる」と評しました。空四軍政治委員の王維国は、彼を「天才」とまで持ち上げたと伝えられています。

1970年頃から、毛沢東と林彪との間に政治的な緊張が高まり、毛沢東は林彪とその一派を粛清する動きを見せ始めます。この状況に強い危機感を抱いた林立果は、父・林彪の指揮下（ただし、計画の主導者については林立果や葉群を疑う声も存在します）、1970年10月に秘密裏に「連合艦隊」と呼ばれる組織を結成しました。この組織名は、彼が観て感動した日本映画『連合艦隊司令長官 山本五十六』や『あゝ海軍』に由来すると言われています。

「連合艦隊」は、1971年3月22日に「五七一工程紀要」と称される毛沢東暗殺および武装蜂起計画を策定したとされます。「五七一」とは、中国語で「武装蜂起（武起義）」と同じ発音であることにちなんでいます。

計画の実行準備が進められる中、林立果のために林彪夫妻は熱心に結婚相手を探し、いわゆる「選妃」を行いました。その結果、南京軍区前歌舞団の舞踏俳優であった張寧が婚約者となりました。

しかし、毛沢東の南部視察中の動きにより、計画は露見の危機に瀕します。毛沢東は1971年8月から9月にかけて中国南部を視察し、そこで林彪一派への非難をさらに強めました。これを受け、林彪は9月5日に毛沢東が乗る専用列車の爆破を試みますが、事前に情報が漏れていたため、毛沢東の列車は林彪側が把握していたルートを外れて北京に戻り、暗殺計画は未遂に終わりました（林立衡が周恩来総理に計画を密告したとの説が有力です）。

暗殺計画が失敗に終わったことを知った林立果は、1971年9月13日未明、父林彪、母葉群ら合計9人と共に、トライデント256号機で河北省北戴河にある山海関空港からソビエト連邦への逃亡を図りました。しかし、搭乗機はモンゴル人民共和国ヘンテイ県ベルフ村南方付近（イデルメグ村付近）で墜落し、搭乗者全員が死亡しました。この一連の事件は林彪事件として知られています。

林立果の婚約者であった張寧は、事件後も波乱の人生を送り、1997年に回顧録『塵劫（尘劫）』を出版しています。また、作家の夏之炎は、林立果を主人公とした小説『虹の彼方に消ゆ—小説・林彪事件』（1979年）を発表しています。

関連項目

林彪事件
林彪
葉群
張寧
* 五七一工程紀要

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