葉隠

『葉隠』（はがくれ）

『葉隠』は江戸時代中期に書かれ、肥前国佐賀の藩士・山本常朝が武士道の心得を口述し、同藩士田代陣基によって筆録された書です。この全11巻から成る作品は、当時の武士たちに向けた重要な指南書として位置づけられています。

書名の由来

本書の「葉隠」という言葉は、元々「葉蔭」を意味し、隠れた奉公の大義を象徴するとされています。また、その由来に関しては様々な説が存在し、西行による和歌や山本常朝の居住地にあった柿の木等とも関連づけられています。さらに「葉」には言葉を意味するとの解釈もあります。

内容

『葉隠』は一般的な武士道論とは異なり、藩主に仕える者の心構えと共に、佐賀藩の歴史や風習に関する知識を集約したものです。江戸時代には非公開とされていたため、一部の人間にのみ知られる内容でした。この書物は「朝毎に懈怠なく死して置くべし」と表現されるように、常に自らの生死に関わらず正しい決断をすることを求められています。

特に「武士道とは死ぬことにある」という有名な一節は、戦時中の特攻や自決に関連付けられたためしばしば誤解されていますが、実際にはより深い生き方や武士の心情についての指摘となっています。常朝は、名誉や忠誠が重要とされる文化のもと、武士に自らの行動の中で忠義を示すべきだと説き、儒学的な武士道を批判しました。

江戸の価値観との対比

当時、江戸幕府は儒教的価値観を重視し、武士は社会的地位に従い複雑な役割を果たしていました。しかし、江戸から遠ざかるにつれ、独自の武士道が生まれる土壌が形成され、特に九州の地域ではより自由な思想が芽生えていきました。山本常朝は、この文脈に位置付けられるラディカルな武士道観を持ち、鍋島藩の祖である鍋島直茂を理想として掲げました。

後世への影響

「葉隠」は、江戸時代から明治時代にかけて重要な書物として再評価され、特に忠君愛国の精神を促す象徴となりました。明治中期には英訳され、アメリカでの紹介もありました。現代においては、ビジネス書としての側面も持つようになり、現代社会における処世術・人間関係の指針としても支持を受けています。

結論

このように、『葉隠』は単なる武士道の教本ではなく、人生観や人間の生き様について幅広く語られた作品であり、武士としての行動規範や倫理観を深く考察させる内容となっています。

この書は、いかなる時代にも適応できる教訓を含んでいるため、現代のビジネスパーソンや人々にとっても共鳴を呼ぶテーマとなっているのです。

もう一度検索