葛根湯

葛根湯（かっこんとう）について

葛根湯は、古代中国の医学書『傷寒論』や『金匱要略』に由来する漢方方剤の一つで、主に葛根や麻黄を使って調製されます。この漢方薬には、プエラリン、ダイゼイン、パエノフロリン、桂皮酸、グリチルリチン、エフェドリン、ギンゲロールなどの成分が含まれていますが、特にエフェドリンとプソイドエフェドリンが重要な活性成分として知られています。

構成生薬

葛根湯は以下の生薬から構成されます:

• - 葛根: クズの根を乾燥させたもので、主に発汗作用があり、首筋の凝りを和らげる効果があります。
• - 麻黄: 強い発汗作用を持ち、風邪の初期症状に効果を示します。
• - 桂皮: 血行を促進し、体温を安定させます。
• - 芍薬: 鎮痛効果があり、体内の血液循環を助けます。
• - 生姜: 消化を助け、悪寒を和らげる作用があります。
• - 大棗: 気を補い、全体の薬効を高める効果があります。
• - 甘草: 副作用を軽減し、全体のバランスを整えます。

これらの生薬は、基本方剤である桂枝湯に葛根と麻黄を加えたものであり、発汗作用を強化しています。葛根湯の発汗作用は強く、特に風邪の初期段階での寒気や肩こり、頭痛に適しています。ただし、虚証や寒証の体質の人には桂枝湯を使うことが望ましいです。

適応症

葛根湯は以下の症状に対して使われます:

• - 風邪の初期症状（寒気や汗が出ない時期）
• - 肩や首のこり
• - 頭痛、鼻水、鼻づまり
• - 神経痛や筋肉痛などの痛み

ただし、強い発汗作用があるため、体温が高く汗をかきやすい場合には効果が薄れる可能性があります。また、風邪による咳や喉の痛みにはあまり適しません。

使用についての注意

葛根湯の使用については注意が必要です。特に、口渇を伴うような明らかな熱証の際には使うべきではなく、他の漢方薬（例: 銀翹散）が推奨されます。また、虚弱体質の方には桂枝湯や他の漢方薬を使用することが好ましいです。更に、副鼻腔炎がある場合は辛夷清肺湯、高熱時には地黄を使用することが勧められます。

近年の研究

最近の研究では、葛根湯が風邪症候群の治療において重要な役割を果たす可能性が示されています。2022年には東北大学が新型コロナウイルス感染症の治療に関する研究を行い、葛根湯が症状軽減に貢献するかもしれないとの結果が報告されました。

葛根湯を題材にした文化

葛根湯は落語の題材にもなっており、「葛根湯医者」という曲芸では、患者に際限なく葛根湯を処方する藪医者の話が展開されます。このことで、葛根湯は名医や薬剤の象徴ともされており、興味深い文化的背景を持っています。

派生物

葛根湯から派生した処方もいくつか存在します:

• - 葛根湯加川芎辛夷: 鼻づまりや慢性鼻炎に効果があります。
• - 独活葛根湯: 慢性的な肩こりを和らげるために独活を加えたものです。

このように、葛根湯は風邪治療や肩こりに広く利用され、新しい研究による可能性が注目されている漢方薬です。

もう一度検索