葛西

葛西とは

葛西（かさい）は、現在の東京都東部に位置する地名です。その範囲は、広義には古代から中世にかけての下総国葛飾郡の西半分を指し、現代では東京都葛飾区、江戸川区、墨田区、江東区の一部にまたがります。狭義には、江戸川区の南部地域、特に旧葛西村を中心としたエリアを指します。

広義の葛西

広義の葛西は、平安時代以前から使われていた広域地名で、下総国葛飾郡の西半分を指します。この地域は、江戸時代には武蔵国葛飾郡となり、明治時代以降は東京府南[[葛飾郡]]となりました。現在の行政区分では、東京都の葛飾区、江戸川区全域、墨田区の一部、江東区の一部が含まれます。中世には、葛飾区の青戸付近が中心地で、葛西氏がこの地に館を構えていました。

歴史

古代、下総国と武蔵国の境界は、現在の隅田川とその河口付近の横十間川でした。平安時代には、伊勢物語に葛西に関する記述が見られ、東武伊勢崎線の業平橋駅（現とうきょうスカイツリー駅）の名称は、この物語に由来しています。平安時代末期には、桓武平氏の一派がこの地に移り住み、葛西氏を名乗りました。葛西氏は、源頼朝の挙兵に呼応して鎌倉幕府に貢献し、東北地方に所領を得て、東北地方の戦国大名となりました。中世には、葛西氏がこの地域を支配しましたが、後に千葉氏、後北条氏の支配下に入りました。豊臣秀吉による関東征伐後、徳川家康の支配下となり、江戸時代には利根川の治水工事が行われ、江戸川が誕生しました。これにより、葛西地域は東西に分断され、西側の葛西は江戸の近郊地域として発展しました。1683年には武蔵国葛飾郡が発足し、江戸の市街地化が進みました。一方、東側の葛西は農村地帯として発展し、葛西氏の末裔が幕府から糞尿の売買権を得て、近郊農業が盛んになりました。

江戸時代には、葛西地域は中川を境に東西に分けられ、「東葛西領」と「西葛西領」と呼ばれるようになりました。これらの地域はさらに細分化され、村々が形成されました。明治時代には、東京府下に置かれ、1889年には南[[葛飾郡]]となりました。1932年には東京市に編入され、1947年には現在の墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区となりました。

大正時代までは、本所や深川の東側は田園地帯でしたが、昭和初期には荒川放水路の完成により宅地化が進み、人口が流入しました。バブル期には農地が宅地化され、工場や倉庫が郊外に移転し、跡地には商業施設や住宅が建設されました。

文化・史跡

葛西には、数々の史跡や文化が残っています。葛西神社は、平安時代末期に葛西清重によって創建されたとされ、葛西地域の総鎮守として信仰を集めています。葛西囃子は、江戸中期に始まったとされる祭囃子で、現在の祭囃子の祖とされています。葛西念仏や葛西踊りは、江戸時代に流行した念仏踊りで、農村文化を反映しています。葛西舟は、農産物の輸送や肥料の運搬に使われていました。葛西城は、鎌倉時代に葛西氏が築いたとされ、現在は葛西城址公園として整備されています。葛西用水は、江戸時代に作られた灌漑用水路です。

狭義の葛西

狭義の葛西は、東京都江戸川区の南部を指し、旧葛西村を中心とする地域です。面積は約14平方キロメートルで、東葛西、西葛西、南葛西、北葛西、中葛西の5つに分かれています。この地域には、東京メトロ東西線の葛西駅があり、駅周辺は商業施設や住宅地が広がっています。江戸時代には、桑川村、長島村、東宇喜田村、西宇喜田村に分かれていましたが、1889年に合併して葛西村となりました。その後、1932年に江戸川区に編入され、1969年の葛西駅開業を機に、住宅地としての開発が進みました。

歴史

この地域は、700年以上前から漁村として栄え、東京湾の干潟は魚介類や海藻が豊富でした。特に葛西海苔は有名で、江戸時代から海苔の産地として知られていました。しかし、昭和30年代には埋め立て計画が決定し、漁業はその歴史に幕を閉じました。昭和20年代には、工場の排水や生活廃水による水質汚染が深刻化しましたが、葛西駅の開業により住宅地として発展しました。葛西臨海公園や葛西海浜公園は、自然保護の観点から整備されたものです。

名所

葛西には、葛西臨海公園、葛西海浜公園、葛西臨海水族園、ダイヤと花の大観覧車、地下鉄博物館などの名所があります。これらの施設は、地域住民だけでなく、多くの観光客にも親しまれています。

葛西は、歴史と文化が深く根付いた地域であり、古代から現代に至るまで、その姿を変えながらも、人々の生活と密接に関わってきました。この記事を通して、葛西の魅力や歴史をより深く知っていただければ幸いです。

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