葛野流

葛野流（かどの-りゅう）

葛野流は、能楽における大鼓方の一流派で、その歴史は豊かな伝統に根ざしています。この流派の創始者である葛野九郎兵衛尉定之（日楽）は伊予で誕生し、能楽の大鼓方の代表的な流派である大倉流から学びました。彼は豊臣秀頼や徳川家康からも支援を受けることで、葛野流を確立することができました。

一時は紀州藩の徳川頼宣に仕官していましたが、その後は徳川秀忠の命により幕府の御用を務めることになりました。江戸時代に入ると、観世流での役者としても活躍し、彼の技芸は広く知られることとなります。

明治維新の後、九世定睦の養子である春雄が家業を引き継がなかったため、葛野流は一時期宗家が絶えることになります。しかし、その後も名手たちによって流派の伝統は守られました。特に、石井一斎、清水然知と並び称される津村又喜とその弟子である川崎九淵が、葛野流の芸を受け継ぎました。九淵のもとからは吉見嘉樹、亀井俊雄、瀬尾乃武、亀井忠雄といった優れた名手が次々と輩出され、葛野流の存在感はさらに強固なものとなりました。

亀井忠雄は宗家の預かり手として流派の維持に努めていましたが、2016（平成28）年1月には、長男の亀井広忠が十五代目の家元として流派を継承しました。これにより、葛野流は新しい時代を迎えつつあります。

葛野流の拠点は東京と金沢にあり、能楽協会には20名弱の役者が登録されています。流派の特徴として、楽譜が非常に複雑であることが挙げられます。また、替え手が多く、装飾的な要素が強調されたスタイルで演奏されることが特徴です。このような研究と実践の積み重ねにより、葛野流は今なおその魅力を保ち続けています。

参考文献

• - 『能楽全書』（東京創元社）
• - 『能・狂言事典』（平凡社）

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