蒙古軍政府

蒙古軍政府の成立と実態

蒙古軍政府は、1936年に内モンゴル（南モンゴル）に樹立された日本の傀儡政府です。この政府の成立は、当時の複雑な国際情勢と、地域における民族自決の動きが絡み合って生まれた結果と言えます。

成立の背景

1933年、日本軍は熱河省を占領し、さらに勢力を拡大して察哈爾省東部まで侵攻しました。この状況下で、内モンゴル一帯の有力者たちは、中[[国]]国民政府に対して自治を要求する動きを始めます。その中心人物が、デムチュクドンロブ（徳王）でした。彼は、内モンゴルの自治権獲得を目指し、他の有力者たちと連携して国民政府に働きかけました。

国民政府は、この動きを受けて蒙古地方自治政務委員会を設置し、ユンデン・ワンチュク（雲王）を委員長に据えました。しかし、実権は自治指導長官である何応欽が握っており、この委員会は形式的なものに過ぎませんでした。自治権を求める内モンゴルの人々にとっては、不満の残る対応でした。

関東軍との連携と独立への動き

国民政府の対応に失望したデムチュクドンロブは、関東軍と接触し、内モンゴルの独立を目指すようになります。関東軍は、この動きを日本の大陸進出の足掛かりとして利用しようとしました。1936年、国民政府は蒙古地方自治政務委員会を察哈爾・綏遠の各蒙政委員会に分割し、関東軍やデムチュクドンロブの動きを制限しようとしました。しかし、この措置は、かえってデムチュクドンロブの独立への意志を強める結果となります。

蒙古軍政府の樹立

1936年2月、デムチュクドンロブは蒙古軍司令部を立ち上げ、同年5月12日には徳化に蒙古軍政府を樹立しました。この軍政府は、モンゴル人によって構成されていましたが、その運営には関東軍から派遣された日本人の顧問が深く関与していました。村谷彦治郎が首席顧問、山内源作が軍事顧問を務め、彼らが実質的な指導権を握っていました。

蒙古軍政府の実態

蒙古軍政府は、形式的にはモンゴル人の自治政府でしたが、実質的には日本の傀儡政権でした。政治、経済、軍事の各分野において、関東軍の影響力が強く、内モンゴルの人々が真に自治を行うことは困難でした。軍政府の設立は、関東軍が内モンゴルを支配下に置くための手段であり、その後の日本の大陸進出政策の一環でした。

蒙古軍政府の成立は、内モンゴルの人々の民族自決の願望と、日本の侵略政策が複雑に絡み合った結果と言えます。しかし、その実態は、日本の傀儡政権であり、内モンゴルの人々にとって真の自治をもたらすものではありませんでした。

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