蒲奴

蒲奴（ぶぬ）

蒲奴（生没年不詳）は、後漢時代の匈奴の単于であり、呼都而尸道皋若鞮単于の子で、烏達鞮侯の弟にあたります。姓は攣鞮氏。

生涯

単于即位まで

父である呼都而尸道皋若鞮単于は、天鳳5年（18年）に異母弟の伊屠知牙師を殺害し、子の烏達鞮侯を左賢王に任命したことが、後の南北分裂の遠因となりました。建武22年（46年）に父が死去すると、兄の烏達鞮侯が単于に即位し、蒲奴は左賢王に任ぜられます。しかし、兄も間もなく亡くなったため、蒲奴が単于の座を引き継ぎました。

北匈奴の苦境

蒲奴が単于に即位した当時、匈奴は旱魃と蝗害に見舞われ、草木が枯れ、人口の3分の2が死亡するという深刻な飢饉に見舞われていました。かつては後漢に対して傲慢な態度を取り、その辺境を荒らしていた匈奴でしたが、蒲奴は後漢がこの混乱に乗じて攻めてくることを恐れ、使者を派遣して和親を求めました。

南匈奴の成立

建武23年（47年）、右薁鞬日逐王の比が後漢に降伏を申し出ます。比の動向を監視していた骨都侯は、比の謀反を疑い、蒲奴に比の誅殺を進言しますが、この情報が比に漏れてしまいます。比は兵を集結させ、これに対し蒲奴は兵を派遣しますが、兵力差により退却を余儀なくされました。

建武24年（48年）冬、比は南辺八部の大人たちに推戴され、呼韓邪単于を称して南匈奴を建国し、後漢を後ろ盾としました。これにより、匈奴は南北に分裂することとなります。

権威の失墜

建武25年（49年）春、南匈奴の醢落尸逐鞮単于は、弟の左賢王である莫に兵を与え、蒲奴の弟である薁鞬左賢王を捕らえさせました。さらに、北匈奴の本拠地を襲撃し、多くの民衆や家畜を奪い、蒲奴を遠方へ退却させました。

建武26年（50年）、蒲奴の権威は失墜し、配下の多くが南匈奴へ離反しました。かつて南匈奴から脱走してきた者が再び南匈奴へ戻ろうとしたため、蒲奴は追撃を試みましたが、南匈奴の迎撃に遭い失敗。蒲奴は漢人奴隷を返還するなど、後漢に対して友好的な姿勢を示そうとしました。

その後、北匈奴は度々後漢に使者を送り和親を請いましたが、進展は見られませんでした。

蒲奴の時代に、匈奴は内紛と天災によって大きく衰退し、南匈奴の成立によって分裂。蒲奴は苦境の中で勢力挽回を図ろうとしましたが、その権威は失墜し、北匈奴は衰退の一途を辿ることとなりました。

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