蒼き狼と白き牝鹿シリーズ

「蒼き狼と白き牝鹿」シリーズは、株式会社コーエー（現コーエーテクモゲームス）より1985年に第1作が発売された歴史シミュレーションゲームのシリーズです。このシリーズは、主にチンギス・ハーンとモンゴル帝国を題材とし、12世紀から15世紀にかけてのユーラシア大陸を舞台に、プレイヤーが統一を目指すという壮大なスケールが特徴です。

シリーズのタイトルは、『元朝秘史』の冒頭部分にある「上天より命ありて生まれたる蒼き狼ありき。その妻なる惨白き牝鹿ありき。大いなる湖を渡りて来ぬ。」という一節から取られています。この神秘的なフレーズが、ゲームの壮大な世界観を象徴しています。

1985年にシリーズ第1作『蒼き狼と白き牝鹿』が発売され、同じくコーエーが発売していた『信長の野望』シリーズ、『三國志』シリーズと共に「歴史三部作」と位置づけられました。この中で、『信長の野望』が日本、『三國志』が中国を舞台としているのに対し、本シリーズはユーラシア大陸全域を舞台とし、そのスケールの大きさがセールスポイントでした。歴史三部作という呼称は、特に本シリーズの発売時に多く用いられましたが、題材のポピュラーさから、販売実績は他の2作に及ばなかったという側面があります。例えば、『信長の野望』シリーズは2013年に14作目、『三國志』シリーズは2020年に14作目が発売されたのに対し、本シリーズの続編は1998年発売の4作目までとなっています。このため、「歴史三部作」という言葉も、本シリーズ4作目の「歴史三部作至高の到達点」というキャッチコピーを最後に使われなくなりました。

販売実績が他の2作品に及ばなかった要因について、当時の社長であった襟川陽一氏は、後に「ジンギスカンというキャラクターのイメージが、欧米の人々にとって『悪』のイメージであったことが影響した」と分析しています。また、「歴史シミュレーションゲームでは、キャラクターの認知度や人気が売れ行きを大きく左右する」という教訓を得たと述べています。これは、歴史を題材にしたゲームであっても、キャラクターの魅力や認知度が非常に重要であることを示唆しています。

シリーズ作品としては、『蒼き狼と白き牝鹿』、『蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン』、『蒼き狼と白き牝鹿・元朝秘史』、『チンギスハーン・蒼き狼と白き牝鹿IV』の4作品が発売されています。これらの作品は、いずれもユーラシア大陸を舞台に、プレイヤーが歴史上の人物を操り、統一を目指すというゲームシステムで、歴史ファンや戦略ゲームファンに支持されました。

関連作品として、『信長の野望』シリーズや『三國志』シリーズが挙げられ、これらは歴史シミュレーションゲームのジャンルを確立した代表的なシリーズです。また、参考文献として『光栄ゲーム用語事典』（光栄、1989年）や『シブサワ・コウ 0から1を創造する力』（PHP研究所、2017年）などが挙げられます。これらの文献は、本シリーズやコーエーのゲーム開発の歴史を理解する上で貴重な情報源となっています。

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