蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン

『蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン』は、1987年 12月に光栄（現コーエーテクモゲームス）から発売されたPC-9801用歴史シミュレーションゲームです。このゲームは、チンギス・ハーンとモンゴル帝国をメインテーマとし、12世紀から15世紀のユーラシア大陸を舞台に、その統一を目指すという壮大なスケールを持っています。シリーズの2作目にあたりますが、実質的にはリニューアル版として扱われ、シリーズの基本システムが確立された重要な作品です。

ゲームの概要

本作の最大の特徴は、オルドシステムと呼ばれる、子作りと血縁将軍の重要性が加味されている点です。血縁関係のない将軍は反乱や寝返りのリスクがあるため、血縁者の育成が不可欠となります。また、人材捜索システムも初めて搭載されましたが、本作では一国に配置できる将軍は1人のみであり、発見できる人材の能力も限定的です。

ゲーム開始時の国王は49歳から59歳と高齢であり、後継者への引継ぎが前提とされています。選択できる国王は4人と少ないながらも、それぞれの国ごとに独自のエンディンググラフィックが用意されています。

戦闘シーンは詳細に描かれており、マップは横16×縦10ヘックスで構成されています。「山」「砂漠」「海」などの地形では、兵士が脱落するなどのペナルティがあり、地形を考慮した戦略が重要になります。「弓矢隊」の間接攻撃や「歩兵隊」の伏兵など、攻撃の種類も豊富で、森では狩猟による兵糧調達も可能です。これらの要素から、守備側が有利で難易度が高いと評価されています。

ゲーム内容

コマンド

ゲーム内の時間は1年が春夏秋冬の4ターンに区切られ、本拠地では各ターン3回、直轄地では1回のコマンドを実行できます。コマンド実行の度に、統率力、判断力、説得力、企画力、体力、武力といった国王の能力値を消費します。能力値の回復のためには、自己訓練を行うか、血縁将軍に統治を委任する必要があります。

当時の他のコーエーの歴史シミュレーションゲームと大きく異なる点は、内政の概念です。本作では「開墾」や「投資」といったコマンドがなく、住民を「町造り」「城造り」「食料作り」「特産品作り」に配分するだけで、国力が自動的に向上します。この住民配分システムは、次作『元朝秘史』にも引き継がれました。また、住民は兵士に割り当てることも可能で、柔軟な国家運営が可能です。

通商

各国で生産できる「特産品」は、「毛皮」「貴金属」「絹」など10種類あり、それぞれ基礎価格が異なります。これらの特産品は、ウイグル商人、イスラム商人、中国商人という3種類の商人との間で売買が可能です。商人によって基本相場が異なるため、うまく利用すれば大きな利益を上げられますが、商人の滞在確率は各国で異なり、常に取引できるとは限りません。

戦闘

戦闘は、横16×縦10ヘックスで構成された戦場マップで行われます。部隊は機動力の高い騎馬、遠距離攻撃が可能な弓矢、伏兵が可能な歩兵の3種類です。地形は、城、町、平地のほか、山、森、砂漠、海があり、それぞれ防御効果に影響します。山、森、砂漠、海では、部隊の兵士が脱落するリスクもあります。また、部隊は戦闘中に分散や合流が可能ですが、基本的には平時において編成しておく必要があります。

一騎打ち

戦闘中には、総大将同士が隣接すると「一騎打ち」が発生する可能性があります。一騎打ちでは、双方の総大将の武力、体力、判断力で勝敗が判定されます。一騎打ちに勝利すると、敵将の捕縛や敵兵の寝返りを誘発できますが、リスクも高く、戦略的な判断が求められます。

工作

その他の工作として、「降伏勧告」「援軍要求」「略奪」「狩猟」「退却」などがあります。これらを駆使することで、戦況を有利に進めることが可能です。

シナリオ

シナリオは、「モンゴル編」と「世界編」の2種類があります。「モンゴル編」は、テムジン（ジンギスカン）を操作してモンゴル統一を目指す1人プレイ専用のシナリオです。「世界編」では、ジンギスカン、源頼朝、アレクシオス、リチャード1世の4人から主人公を選択でき、最大4人での同時プレイが可能です。

モンゴル編をクリアすると、一部の資産と人材を引き継いで世界編をプレイできます。史実とは異なる設定が含まれていますが、これは歴史に不慣れなユーザーへの配慮によるものです。

オルドシステム

本作では、後継者作り、子作りは重要な要素です。「オルド」システムでは、后を口説いて同衾し、子をもうけます。誕生した子供は、男子は10歳で将軍候補、女子は8歳で将軍候補に嫁がせられます。これにより、血縁関係のある将軍を育成することが可能です。

他機種版

本作は、各種パソコンやファミリーコンピュータに移植されたほか、欧米ではPC/AT互換機|PC_AT互換機やAmigaに移植されました。MSXではMSX1版とMSX2版が、Windows版は復刻版として発売されています。携帯電話ゲーム版やSteam版もリリースされています。

リニューアル

第1作『蒼き狼と白き牝鹿』と第2作『ジンギスカン』では、ゲームシステムは共通しているものの、グラフィックが強化されたほか、戦闘画面やシナリオなどがリニューアルされています。特に第1作では、戦闘画面が簡素で、狩猟や伏兵などの工作も存在しませんでした。また、シナリオも「モンゴル編」と「世界編」を通したプレイしかできませんでした。

音楽

本作では、ゲームのBGMをまとめた「サウンドウェア」が初めて製作されました。カセットテープ版のサウンドウェア同梱版と、後に単品発売されたサウンドトラックが存在します。

評価

ファミリーコンピュータ版は、ゲーム雑誌で一定の評価を得ています。