蔡義

蔡義（さい ぎ）

蔡義は、紀元前71年に没した前漢時代の人物で、河内郡温県（現在の河南省温県）の出身です。蔡誼とも記されます。

生涯

蔡義は、『詩経』（特に韓詩）を同じ郡の趙子から学びました。彼の学識の高さは広く知られ、大将軍の幕府に迎えられました。若い頃は家が貧しく、徒歩で移動していたため、周囲の者が彼のために牛車を用意したという逸話が残っています。

数年後、蔡義は覆盎城門候に転任しました。その後、朝廷が韓詩に精通する人物を求めていることを知り、召喚に応じましたが、なかなか謁見の機会を得られませんでした。そこで、自ら謁見を求める上奏文を提出したところ、昭帝が彼に会うことを許しました。昭帝は蔡義から『詩経』について話を聞き、その内容に大いに満足し、彼を光禄大夫・給事中に抜擢し、『詩経』の指導役を任せました。

元鳳3年（紀元前78年）には少府に任命され、元鳳6年（紀元前75年）には楊敞の後任として御史大夫に就任しました。

元平元年（紀元前74年）に宣帝が即位すると、丞相であった楊敞が亡くなったため、その後任として蔡義が丞相に任命され、陽平侯に封じられました。

丞相に就任した当時、蔡義は80歳を超えており、背が低く、髭や眉毛も抜け落ち、まるで老婆のような外見だったと言われています。歩行も困難で、常に役人が両脇を支えなければ移動できない状態でした。当時の実権は、大将軍の霍光が握っていたため、霍光が蔡義を丞相に選んだのは、その賢明さではなく、操りやすい人物を選んだからだという噂が流れました。霍光はこれを聞きつけ、侍中などの皇帝の側近や自分の部下たちに、「皇帝の師である蔡義が宰相になるのは当然である。『操りやすい人物を選んだ』などという言葉は、決して人々の耳に入れてはならない」と注意しました。

本始3年（紀元前71年）に蔡義は亡くなり、節侯と諡されました。しかし、彼には子供がいなかったため、陽平侯の爵位は断絶しました。

蔡義は、『詩経』の知識を王吉や、同じ河内郡出身の食子公に伝えました。

参考文献

班固 著『漢書』巻19下 百官公卿表下
班固 著『漢書』巻66 蔡義伝
* 班固 著『漢書』巻88 儒林伝

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