蔡遷

蔡遷（さい せん）は、生年不詳ながら、洪武3年（1370年）に没した、元末から明初にかけて活躍した軍人です。蔡僊とも記されます。彼の出自は定かではありませんが、その生涯は動乱の時代を駆け抜けた武将として、後世に名を残しています。

蔡遷は、至正11年（1351年）に芝麻李（しばり）に従い、徐州で勢力を拡大しました。翌年には芝麻李がトクトに敗れると、蔡遷は新たな主君として朱元璋を選び、その先鋒として活躍することになります。至正15年（1355年）、朱元璋に従って長江を渡り、采石、太平を攻略し、さらに溧水を奪取。元の蛮子海牙の水寨や陳埜先を撃破する戦いで、彼はその武勇と戦術眼を発揮し、数々の功績を挙げました。

至正16年（1356年）、朱元璋が南京を平定すると、蔡遷は千戸に任命され、その功績を認められました。その後も、徐達に従って広徳、寧国を攻略し、万戸へと昇進。至正17年（1357年）には常州に進攻し、黄元帥を捕らえる大手柄を挙げ、都先鋒に任じられます。馬馱沙への進攻や池州攻略でもその勇名を轟かせました。至正18年（1358年）には樅陽を攻め、衢州、婺州への進攻にも参加し、帳前左翼元帥に任じられるなど、その勢いは止まるところを知りませんでした。

至正20年（1360年）、陳友諒との龍江の戦いでは、敵を打ち破り、太平を奪還。至正21年（1361年）には安慶の水寨を奪取し、九江を占領。瑞昌では陳友諒の八陣指揮を破り、南昌を攻略するなど、連戦連勝の活躍を見せます。至正23年（1363年）には安豊救援のため合肥を攻撃し、鄱陽湖の戦いにも参戦。至正24年（1364年）には武昌への進攻に従い、指揮同知に進みました。

その後、常遇春に従って鄧克明の残党を掃討し、贛州に進攻。至正25年（1365年）には南安、南雄を奪取し、饒鼎臣を茶陵で追撃。龍驤衛同知に転じました。至正26年（1366年）には徐達に従って高郵を攻略し、馬騾港を破るなど、その武功は衰えることを知りませんでした。武徳衛指揮使に任じられ淮安を守り、その後黄州に移駐して守備。徐達に従い、湘潭、辰州、全州、道州、永州を次々と攻略し、荊州衛指揮となりました。

至正27年（1367年）には広西に進軍して経略し、広西行省参政に転じ、靖江王相を兼任。少数民族の反抗を鎮圧しました。蔡遷は数々の戦いでその手腕を発揮し、明朝の建国に大きく貢献しました。

洪武3年9月丙午（1370年10月10日）、蔡遷は息を引き取りました。彼の遺体は南京に送られ、手厚く葬られました。その功績を称え、資善大夫、上護軍、行省右丞の位が追贈され、安遠侯に追封。諡は武襄とされました。蔡遷は、その生涯を通して、卓越した軍事的能力と不屈の精神を具現化した人物として、歴史に名を刻んでいます。

蔡遷の戦歴は、明朝の成立に不可欠な要素であり、彼の勇敢な活躍は、後世に語り継がれるべきでしょう。

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