蕪木古墳群

蕪木古墳群について

千葉県山武市松尾町蕪木に所在する蕪木古墳群は、房総台地の東端、標高40mの台地上に築かれた古墳群です。この地には、4基の前方後円墳と15基の円墳が確認されており、古代におけるこの地域の勢力を示す重要な遺跡となっています。

古墳群の構成と発掘調査

蕪木古墳群の中でも、特に1号墳と5号墳は詳細な発掘調査が行われました。1号墳は「朝日ノ岡古墳」とも呼ばれ、蕪木八幡神社の境内に位置しています。1952年（昭和27年）と1953年（昭和28年）には、日本大学によって発掘調査が実施されました。また、5号墳については、日本大学の調査後に、1989年（平成元年）に山武考古学研究所によって再調査が行われ、墳丘測量や横穴式石室の再確認がなされました。

過去には、17号墳と18号墳も存在しましたが、1984年（昭和59年）の土砂採取事業に伴い調査後、消滅しています。

各古墳の特徴

1号墳（朝日ノ岡古墳）

1号墳は、全長76mの前方後円墳で、前方部を西に向けています。後円部の直径は48m、前方部の幅は40mで、周溝は盾形に二重で巡っています。しかし、東側の周溝は県道工事によって破壊されています。出土品としては、須恵器、土師器、管玉などが確認されています。また、埴輪列が墳丘の中段と裾部の二箇所に配置されており、円筒埴輪、人物埴輪、馬形埴輪などが発見されました。周溝沿いの裾部には、円筒埴輪のほか、人物、水鳥、鶏の形象埴輪が交互に並べられていました。

5号墳

5号墳は、1号墳の東南約150mに位置する前方後円墳で、前方部を南西に向けています。全長47m、後円部径20m、前方部幅20mと、1号墳に比べて小規模です。墳丘の高さは前方部、後円部ともに4mです。墳丘のくびれ部には、複室構造の切石積みの横穴式石室が設けられており、盗掘の痕跡が見られるものの、比較的多くの副葬品が残っていました。特に注目されるのは、長頸壺を含む須恵器、12振りの鉄製直刀、銅製馬具一式（轡、雲珠、辻金具）、約50個の鉄鋲、4個の金銅製素環耳飾、46個のガラス小玉、そして他に類を見ない金銅製鞘入刀子と金銅製巾着形容器です。これらの副葬品は、当時の権力者の存在を示唆する貴重な資料となっています。

古墳の築造時期

築造時期については、1号墳は6世紀後半、5号墳は埴輪が出土しないことから6世紀末と推定されています。17号墳と18号墳も同様に6世紀末頃の築造と考えられています。

古墳群の位置と周辺環境

蕪木古墳群は、九十九里平野を流れる木戸川の東岸に位置し、JR総武本線松尾駅から北へ約1.5kmの場所にあります。古墳群の南側には、版籍奉還後に太田資美が築城した松尾城が隣接しており、また大堤古墳群も近隣に存在します。木戸川上流の西岸には大塚古墳群が、さらに上流の東岸には芝山古墳群があり、この地域が古墳時代において重要な場所であったことが伺えます。

交通アクセス

蕪木古墳群へは、JR総武本線松尾駅から徒歩約20分です。また、成田空港第2旅客ターミナルからは、空港シャトルバスで「松尾台工業団地入口」下車後、徒歩でアクセス可能です。

参考資料

『日本古墳大辞典』 東京堂出版、1989年。ISBN 4-490-10260-7
『千葉県の地名（日本歴史地名大系 12）』平凡社、1996年。ISBN 978-4-582-49012-1

関連項目

古墳時代
芝山古墳・はにわ博物館
房総の魅力500選

外部リンク

蕪木古墳群 NPO法人山武市観光協会
旭ノ岡古墳（蕪木1号墳） 山武市教育委員会
芝山古墳・はにわ博物館 展示紹介 朝日ノ岡古墳

この古墳群は、千葉県の古代史を解明する上で非常に重要な役割を果たしており、訪れる人々に古代のロマンを感じさせてくれるでしょう。

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