蕭友梅

蕭友梅（しょう ゆうばい、XIAO You-mei）は、1884年1月7日に中国広東省に生まれ、1940年12月31日にその生涯を閉じた、中国近代音楽史において極めて重要な作曲家であり、先駆的な音楽教育家です。彼の字は思鶴、あるいは雪明とも称されました。

幼い頃、マカオで西洋音楽と出会ったことが、彼のその後の歩みを決定づける契機となります。1899年に広州の時敏学堂で学び始めた後、1901年にはさらなる知識を求め日本へと渡りました。日本滞在中、彼は教育学を中心に、ピアノや声楽といった実技を含む音楽の専門教育を受けました。この時期、中国の革命運動にも関心を寄せ、1906年には中国同盟会に加盟しています。

1910年に中国へ帰国した蕭友梅は、清朝が実施した帰国留学生向けの卒業試験を受け、優秀な成績で文科挙人の称号を得ました。しかし、彼の探求心は止まることなく、間もなく音楽の本場であるドイツへの留学を決意します。ドイツでは、著名な学術機関であるライプツィヒ大学と、音楽教育の名門であるライプツィヒ音楽院で研鑽を積みました。特にライプツィヒ大学では哲学を専攻し、1916年には「17世紀以前の中国管弦楽団の歴史研究」というテーマで哲学博士の学位を取得しています。これは、西洋の学問手法を用いて中国の音楽史を深く掘り下げた画期的な研究でした。博士号取得後も、1916年10月にはベルリン大学哲学科で引き続き学びを深めました。

ドイツからの帰国後、蕭友梅は中国の音楽文化と教育の近代化にその情熱を注ぎます。1920年には中華民国教育部の編集審査員に任命され、国の教育方針策定に関わる立場となりました。翌1921年には北京大学の音楽研究会で講師を務め、音楽教育の現場に復帰しました。彼の提言は高く評価され、1922年には北京大学付属音楽伝習所への組織改編が実現し、彼はその教務主任として実務を担いました。

さらに教育改革への熱意を燃やした蕭友梅は、1927年、当時の教育総長であった蔡元培からの強力な支持を得て、中国で初めて音楽を専門とする高等教育機関「国立音楽院」を上海に設立するという偉業を成し遂げました。この機関は、中国の音楽教育における新たな扉を開くものでした。設立から間もない1929年9月には、国立音楽院は「国立音楽専科学校」と改称・改組され（現在の上海音楽学院の前身）、蕭友梅は初代校長に就任しました。彼はこの職務を生涯にわたり務め、学校運営の傍ら、中国古代音楽史を研究・教授するための「旧楽研革課程」を自ら設け、そのための教材作成にも心血を注ぎました。

作曲家としても多くの作品を残しています。生涯を通じて、『今楽初集』や『新今楽初集』といった作品集を含む100曲以上の歌曲を生み出しました。また、ピアノ曲、管弦楽曲、弦楽四重奏曲、合唱曲など、多様なジャンルにわたる作品を手がけ、西洋音楽の技法を中国の音楽文化の中に積極的に取り入れようと試みました。

彼の教育者としての貢献は、作曲活動と並行して行われた多くの音楽教材の編纂にも見て取れます。1924年の『風琴教科書（オルガン教科書）』を皮切りに、1925年には『鋼琴教科書（ピアノ教科書）』、1927年には『小提琴教科書（ヴァイオリン教科書）』、そして同年には『和声学』、1928年には『普通楽学（一般音楽学）』など、基礎から専門的な内容までを網羅した数多くの教科書を世に送り出しました。これらの教材は、当時の中国における西洋音楽教育の普及と質の向上に不可欠な役割を果たしました。さらに、音楽に関する50編以上の論文を発表しており、理論家としてもその才能を発揮しました。

蕭友梅は、西洋音楽の深い知識と中国の伝統文化への敬愛を持ち合わせ、その生涯を中国近代音楽の発展と音楽教育制度の確立に捧げました。彼の設立した教育機関は現在の上海音楽学院へと受け継がれ、彼の残した作品や理論は今なお研究対象となっています。1940年12月31日、彼は肺病のため上海で惜しまれつつ亡くなりました。中国近代音楽史における彼の功績は計り知れません。

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