蕭峯

蕭峯（しょうほう）

蕭峯は、金庸の武俠小説『天龍八部』に登場する主要人物の一人です。物語の序盤では、漢民族の英雄「喬峯（きょうほう）」として登場しますが、後に契丹人であることが判明します。この出自が彼の人生を大きく揺るがすことになります。

人物像

蕭峯は、豪快で酒を愛する性格の持ち主です。その人柄と卓越した武術の腕から、多くの人々に慕われており、若くして丐幇（かいほう）の幇主（ほうしゅ）という要職に就いていました。しかし、契丹人であるという出自が明らかになると、周囲の態度は一変し、彼は苦悩の日々を送ることになります。

彼は漢民族の中で育ちましたが、自身の血筋から、漢民族と契丹人の間の争いがなくなることを願っていました。慕容博から宋の国土を分割する提案を受けた際には、「それは両民族に多くの血を流すことになる」と拒否し、民族間の平和を願う彼の強い思いが表れています。契丹への忠誠心と漢民族への愛情の間で、彼は生涯苦しみ続けることになります。

また、蕭峯は情に厚く、義理堅い人物としても描かれています。恋人の阿朱（あしゅ）は、彼が契丹人であると発覚した後も変わらぬ愛情を注ぎ、その献身に心を打たれた蕭峯は彼女を深く愛しました。しかし、不慮の事故により自らの手で彼女を死なせてしまいます。阿朱の死後、彼は他の女性を寄せ付けることはありませんでした。阿朱の妹である阿紫（あし）に対しては、その悪辣な性格に手を焼きながらも、姉の遺言に従って面倒を見続けました。

武功

蕭峯は武術においても非常に優れた才能を発揮します。少年時代には少林寺で修行を積み、作中でも屈指の実力者として知られています。丐幇の幇主となる以前から、多くの難題を解決し、その実力と人望から、若くして幇主に選ばれました。聚賢荘の戦いでは、契丹人であるという理由で濡れ衣を着せられ、20名を超える凄腕の武芸者たちと単身で戦い、重傷を負った阿朱を抱えながらも、多くの敵を打ち倒して生還しています。少林寺での戦いでは、慕容復、荘聚賢（游坦之）、丁春秋といった一流の武芸者と互角に渡り合い、その圧倒的な強さを示しました。

降龍十八掌（こうりゅうじゅうはっしょう）

丐幇の歴代幇主に受け継がれる武術で、「剛」と「陽」の極みを体現しています。この武術は、後に『射鵰英雄伝』の主人公である郭靖やその師匠である洪七公も習得します。

太祖長拳（たいそちょうけん）

北宋の太祖、趙匡胤が作ったとされる武術です。一般的にはそれほど強力な武術ではありませんが、内力の強い蕭峯が使うことで、驚異的な威力を発揮します。聚賢荘の戦いでは、この武術を使い、少林寺の武芸者たちを圧倒しました。

演じた俳優

映画

徐少強：『新天龍八部』(1982年、香港)
ドニー・イェン：『シャクラ』(原題：天龍八部之喬峰傳)(2023年、香港・中国)

テレビドラマ

梁家仁：『天龍八部之六脈神剣』(1982年、香港)
惠天賜：『天龍八部』(1991年、台湾)
フェリックス・ウォン：『天龍八部』(1997年、香港)
フー・ジュン：『天龍八部』(2003年、中国)

蕭峯は、『天龍八部』という作品において、重要なテーマを担う人物であり、彼の苦悩と活躍は、多くの読者の心を捉えて離しません。彼の悲劇的な運命と、英雄としての生き様は、今もなお語り継がれています。

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