薛万徹

薛万徹（せつ ばんてつ）

薛万徹は、隋末から唐初期にかけて活躍した武将で、その生涯は数々の戦功と政治的な陰謀に彩られています。彼の武勇は唐王朝の成立と拡大に大きく貢献しましたが、その一方で、不遇な最期を遂げることとなりました。

生い立ちと唐への帰順

薛万徹は、薛世雄の子として生まれました。隋朝末期、父が涿郡太守であった頃、兄の薛万均と共に羅芸と親交を深めます。羅芸と共に唐に帰順し、その武勇から車騎将軍に任ぜられ、武安県公に封じられました。竇建徳の侵攻を羅芸と共に防ぎ、その名を上げました。

玄武門の変と李世民への帰順

薛万徹は皇太子・李建成に仕えていましたが、武徳9年（626年）の玄武門の変で李建成が殺害されると、東宮の兵を率いて李世民（後の太宗）の軍と激戦を繰り広げました。しかし、李建成の首を示されると戦意を喪失し、南山へ逃亡。その後、李世民の説得に応じて帰順し、その忠誠心を認められ罪を許されました。

唐の武将として

帰順後、薛万徹は唐の武将として活躍します。柴紹による梁師都討伐に従軍し、突厥軍を破るなどの戦功を挙げました。貞観4年（630年）には、李靖の下で突厥の頡利可汗を討ち、統軍に任ぜられ、爵位も郡公に進みました。また、吐谷渾討伐にも参加し、兄の薛万均と共に敵軍を破るなど、その武勇を遺憾なく発揮しました。

高句麗遠征と失脚

貞観18年（644年）、薛万徹は左衛将軍に進み、丹陽公主を妻に迎え、駙馬都尉を加えられました。その後、右衛大将軍・杭州刺史、代州都督などを歴任。貞観22年（648年）には、青丘道行軍総管として高句麗遠征に参加し、泊汋城を攻略するなどの戦功を挙げました。しかし、軍中で物資を私物化しているとの告発を受け、太宗の温情により譴責のみで済まされましたが、副将の裴行方による怨言の告発により、庶民に落とされ辺境に流されてしまいます。

房遺愛の謀反と最期

大赦によって帰還後、薛万徹は寧州刺史に任ぜられました。永徽2年（651年）に入朝すると、房遺愛と親しくなり、荊王李元景の擁立を謀ります。しかし、永徽4年（653年）に計画が露見し、獄に下され処刑されました。処刑の際、彼は自身の不遇を嘆き、処刑人を叱咤するなど、最期までその剛胆さを示しました。

人物評

太宗李世民は薛万徹を「大勝でなければ大敗だ」と評しました。これは、彼の優れた武将としての能力と、同時に大胆すぎる性格を表していると言えるでしょう。薛万徹は、その武勇と忠誠心で唐王朝に貢献しましたが、その性格が災いし、不遇な最期を遂げた悲劇の武将と言えるでしょう。

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