頡利可汗

頡利可汗（Ilig qaγan）

頡利可汗（イリグ・カガン）は、7世紀前半に東突厥を統治した可汗であり、阿史那氏の出身で、名は咄苾（とひつ）といいました。彼は啓民可汗の三男として生まれ、東突厥の歴史において重要な役割を果たしました。

生涯

即位まで

頡利可汗は、啓民可汗の息子として生まれ、早くから莫賀咄設（バガテュル・シャド）という官位に就いていました。620年に兄である処羅可汗が亡くなると、後を継いで頡利可汗として即位しました。彼はレビラト婚の慣習に従い、隋の公主であった義成公主を娶り、また、始畢可汗の子である什鉢苾を突利可汗としました。

唐との対立

即位後、頡利可汗は唐との間で度重なる軍事衝突を繰り広げました。621年には、自ら軍を率いて雁門を攻撃しましたが、唐の将軍である李大恩に敗北しました。しかし、その後も劉黒闥と協力して唐軍を破るなど、一進一退の攻防を続けました。624年には、突利可汗と共に唐に侵攻しましたが、李世民（後の太宗）の反撃を受け、軍を撤退させました。その後、和睦を求めて阿史那思摩を唐に派遣し、阿史那思摩は和順王に封ぜられました。

関係悪化と東突厥の滅亡

一時的に唐との関係が改善したかに見えましたが、625年には再び朔州を攻撃するなど、緊張状態が続きました。626年には、自ら十余万騎を率いて武功に侵攻し、京師を脅かしましたが、尉遅敬徳に敗れました。その後、和睦を申し入れましたが、唐との関係は修復されませんでした。627年、陰山以北の諸部が反乱を起こし、東突厥の内部は混乱しました。629年、薛延陀が漠北で自立し、東突厥からの離反が相次ぎました。そのような状況下で、太宗は李靖を総大将とする討伐軍を派遣し、東突厥を攻撃しました。630年、頡利可汗は李靖の奇襲を受け大敗し、単騎で逃亡しましたが、捕らえられ唐の都へ送られました。

最期

唐に連行された頡利可汗は、太宗から右衛大将軍の位を与えられました。634年に亡くなると、太宗はその死を悼み、故郷で葬儀を行うことを許可し、帰義王の位を贈り、荒王と諡しました。彼の死は、東突厥の完全な滅亡を意味しました。

頡利可汗の生涯は、東突厥の盛衰を象徴するものであり、唐との関係や内紛によって翻弄された悲劇的な君主として、歴史に名を残しています。

家族

妻
可賀敦（カガトゥン：皇后）
義成公主
子
* 特勤（テギン） - 伽那（カーナー）の父で感徳（かんとく）の祖父

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