薛国観

薛国観（せつ こくかん）

薛国観（1582年3月26日 - 1641年9月12日）は、明朝末期の官僚です。字は廷賓（ていひん）といい、陝西省韓城の出身でした。彼はその生涯において、清廉潔白でありながらも、時に冷酷な一面を見せる人物であったと伝えられています。

生涯

薛国観は万暦47年（1619年）に科挙に合格し、進士に及第しました。その後、萊州（らいしゅう）の推官（すいかん）に任じられました。天啓4年（1624年）には給事中（きゅうじちゅう）という役職に昇進し、この頃から政治の中枢に関わるようになります。彼は宦官である魏忠賢（ぎちゅうけん）を支持したため、東林党（とうりんとう）の恨みを買うことになります。

崇禎元年（1628年）には、魏忠賢の失脚に連座し、官職を免じられて故郷に帰りました。しかし、崇禎3年（1630年）に兵科給事中として再び朝廷に呼び戻され、その後も順調に昇進を重ね、左僉都御史（させんとぎょし）にまで至りました。崇禎10年（1637年）には礼部左侍郎（れいぶさじろう）と東閣大学士（とうかくたいがくし）に任命され、国政に深く関与するようになりました。

崇禎12年（1639年）には、内閣首輔（ないかくしゅほ）という宰相の地位にまで上り詰めました。薛国観は、当時の皇帝であった崇禎帝（すうていてい）の意向を受け、財政難を打開するために軍事費捻出策を立案しました。その策とは、軍事に疎遠な外戚、特に皇帝との関係が比較的遠い外戚たちに、多額の「義捐金」の供出を強要するというものでした。

この強硬な徴収策が問題を引き起こします。当時、武清侯（ぶせいこう）の李国瑞（りこくずい）が庶兄の李国臣（りこくしん）と仲たがいしていました。怒った李国臣は、「父の遺産である40万両を李国瑞が独り占めにした」と朝廷に訴え出ました。崇禎帝は、この訴えを受けて、直ちに李国瑞に40万両の供出を命じました。李国瑞は、家財をすべて売り払っても要求額には到底及ばず、絶望して自ら縊死（いし）してしまいました。さらに、この事件の直後、皇子である朱慈燦（しゅじさん）が病死したことで、この死は李国瑞の祖父の姉である孝定太后（こうていたいこう）の呪いであるという噂が広まりました。

これらの出来事により、薛国観は崇禎帝の怒りを買い、翌年には官職を解かれて故郷に帰ることになりました。さらに、呉昌時（ごしょうじ）らの策略にはめられ弾劾を受け、翌年8月には収賄罪で自殺を命じられました。しかし、崇禎帝の怒りは収まらず、遺体の収骨許可もなかなか下りず、遺体は2日間も棺に納められたまま放置されたといいます。薛国観の財産は没収されましたが、その額はわずか600両であったと伝えられています。このことから、彼が清廉潔白であったとする見方もありますが、一方で、政治的策謀に長けた人物であったという見方もできます。

参考資料

『崇禎長編』
『明史』列伝第一百四十一
『玉堂薈記』
『注解大六壬指南』

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