薛貴

薛貴（せつき、生年不詳 - 1430年）は、明代の軍人であり、その出自はモンゴルにあります。元の名は脱火赤（だっかしゃく）といい、本貫は大都路昌平県です。薛貴の生涯は、明朝の激動期と深く結びついており、特に靖難の変での活躍と、永楽帝による北伐への参加が特筆されます。

薛貴は薛台（せつだい）の子として生まれ、兄に薛斌（せつひん）がいました。建文帝の時代に靖難の変が勃発すると、薛貴は燕王朱棣（後の永楽帝）の舎人として仕え、その起兵に従いました。彼は、度々燕王の危機を救い、その忠誠心と武勇を示しました。この功績により、薛貴は官位を重ね、最終的には都指揮使にまで昇進しました。

1410年（永楽8年）、永楽帝による第一次漠北遠征では、中軍都督僉事として従軍し、軍事面で重要な役割を果たしました。その後も、薛貴は永楽帝の信頼を得て、数々の戦役に参加しました。1422年（永楽20年）9月には、その長年の功績が認められ、安順伯に封じられました。さらに、指揮使の位の世襲も認められ、その家系は明朝の武門として確固たる地位を築きました。

永楽帝の死後、洪熙帝が即位すると、1425年（洪熙元年）閏7月、薛貴は清平伯呉成（せいへいはく ごせい）、都督馬英（ととく ばえい）、都指揮梁成（としき りょうせい）らと共に、軍を率いて辺境の巡回を行いました。これは、明朝の安定を維持するための重要な任務でした。その後、1426年（宣徳元年）7月、宣徳帝によって、薛貴の爵位は安順侯に昇進し、世券（せけん、世襲の権利を記した証書）を与えられました。

薛貴は1430年（宣徳5年）2月、その生涯を閉じました。死後、その功績を称えられ、浜国公（ひんこくこう）の位を追贈されました。また、諡（おくりな）は忠勇（ちゅうゆう）とされました。薛貴には子がなかったため、甥の薛山（せつざん）が指揮使の位を継ぎました。薛貴の生涯は、明朝の成立と発展に大きく貢献した人物として、歴史に名を刻んでいます。

薛貴は、モンゴル出身でありながら明朝に忠誠を尽くし、その武勇と忠義によって、安順伯、安順侯という高位にまで昇りつめました。彼は、靖難の変という内乱、永楽帝の北伐といった対外戦争、そして明朝の国境警備に貢献し、その生涯を通じて明朝の安定と繁栄を支えた人物でした。彼の存在は、明朝初期の武将の典型を示しており、歴史における重要な人物の一人として評価されています。

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