薬師池公園

東京都町田市、多摩丘陵の豊かな緑に包まれた野津田町にある薬師池公園は、町田市立の広大な都市公園です。この公園は、その美しい景観と歴史的な価値が認められ、「新東京百景」や「日本の歴史公園100選」に選定されているほか、東京都の指定名勝にも指定されています。公園の中心には、その名の由来となった薬師池が穏やかな水面をたたえています。

地理

薬師池公園は、町田市のほぼ中央に位置し、東側は南北に走る東京都道18号府中町田線（通称：鎌倉街道）に面しています。周辺は町田市の野津田町南東端にあたり、本町田や山崎町、金井町、薬師台といった町境が複雑に入り組むエリアです。

公園が広がるのは多摩丘陵の南部にあたり、起伏に富んだ地形が特徴です。特に園の周囲は「暖沢谷戸」と呼ばれる谷あいの地形を形成しており、東、南、西側は丘陵地の急斜面が迫り、北側は鶴見川に向かって緩やかな下り坂となっています。公園の南から西を経て北西にかけて広がる丘陵地は、西側の七国山や南側の本町田の丘陵地と尾根で繋がっており、本町田丸山緑地、七国山緑地、民権の森緑地などと一体となって、緑豊かな里山の景観を作り出しています。鎌倉街道を挟んだ東側には町田リス園が、南側には町田えびね苑（本町田丸山緑地の一部）やUR藤の台団地があります。

沿革

薬師池公園の歴史は古く、園の中心である薬師池の原型は、1590年（天正18年）に灌漑用に造られた「福王寺溜池」に遡るとされています。戦後、この地は都市公園としての整備が進められ、1961年（昭和36年）10月5日には町田市の都市計画公園として決定されました。

開園に向けた整備の中で、歴史的な建造物の移築が行われました。1974年（昭和49年）3月には江戸時代後期の民家である旧荻野家住宅が園内に移築され、同年8月には東京都指定有形文化財に指定されました。翌1975年（昭和50年）3月には、さらに古い民家である旧永井家住宅が移築され、1978年（昭和53年）1月には国の重要文化財に指定されています。これらの古民家は、当時の貴重な建築様式や暮らしぶりを今に伝えています。

そして1976年（昭和51年）4月1日、薬師池公園は正式に開園しました。その後も公園の魅力は増し続け、1982年（昭和57年）には休憩施設であるやくし売店がオープンし、やくし茶屋も現在の場所に移設されました。同年10月には「新東京百景」の一つに選定され、1989年（平成元年）には椿園が開設されるなど、園内の施設や見どころが拡充されていきました。1998年（平成10年）には東京都指定名勝に指定され、1999年（平成11年）には町田市フォトサロンが開館しました。2007年（平成19年）には「日本の歴史公園100選」にも選ばれ、その歴史的・文化的価値が高く評価されています。

近年では、薬師池の水質改善にも力が入れられ、2015年から2016年にかけて大規模な掻い掘りを含む整備が行われました。また、2020年には隣接地に「町田薬師池公園四季彩の杜」として、西園や観光施設であるウェルカムゲートが新たに整備され、公園一帯の魅力がさらに高まっています。

主な施設と見どころ

公園の中心は何と言っても薬師池です。池の周囲には散策路が整備されており、四季折々の自然を楽しむことができます。池に架かる趣のある木橋も公園のシンボルとなっています。園内には、前述の東京都指定有形文化財「旧荻野家住宅」と、国の重要文化財「旧永井家住宅」が保存されており、往時の日本の農家の暮らしを垣間見ることができます。また、園内には軽食や休憩に利用できる「やくし茶屋」や「やくし売店」といった商業施設も設けられています。公園では一年を通して様々な花が見られ、特にツバキをはじめとする季節ごとの花々が訪れる人々を和ませてくれます。

交通アクセス

公共交通機関を利用する場合、小田急線・JR横浜線町田駅または小田急線鶴川駅からバスが便利です。町田駅からは、町田バスセンターまたは小田急線東口の乗り場から「本町田経由野津田車庫行」または「本町田経由鶴川駅行」のバスに乗車し、「薬師池」または「薬師ヶ丘」バス停で下車します。また、「市民病院前経由やくし台センター行」のバスで終点下車というルートもあります。鶴川駅からは、「本町田経由町田駅行」で「薬師ヶ丘」または「薬師池」バス停下車、あるいは「榛名坂ヒルズ経由やくし台センター行」で終点下車というルートがあります。

自家用車で来園する場合、公園周辺には複数の駐車場が整備されていますが、休日などは家族連れなどで大変混雑し、満車となることが常態化しています。また、周辺の鎌倉街道は休日を中心に慢性的な渋滞が発生しやすいエリアですので、特に注意が必要です。

その他

町田市が交付している原動機付自転車用のデザインナンバープレートには、薬師池公園がテーマとして採用されています。プレートには、公園のランドマークである薬師池とそこにかかるたいこ橋、そして市の花であるツバキと市の鳥であるカワセミがデザインされており、市民に親しまれています。

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