藤井凡大

藤井凡大：日本の音楽界を彩った作曲家、指揮者、教育者

藤井凡大（ふじい ぼんだい、1931年1月2日 - 1994年7月24日）は、日本の作曲家、指揮者、そして音楽教育家として、その生涯を音楽に捧げました。彼は、邦楽と洋楽の両方に精通し、その境界を越えた独自の音楽性を確立しました。

生涯と音楽活動

大分県竹田市に生まれた藤井は、幼少期から母親に生田流箏曲を学び、音楽への道を歩み始めました。旧制福岡高等学校時代には、福岡合唱協会で指揮者の石丸寛と出会い、大きな影響を受けました。九州大学工学部造船学教室に進学後も、音楽への情熱は衰えず、在学中から作曲活動を開始しました。

1953年、東京新聞主催の全国邦楽コンクール作曲部門で「和楽器と管弦楽協奏の為の一楽章」を自ら箏を演奏し、見事1位を獲得。文部大臣賞、NHK賞を受賞し、その才能を広く知らしめました。この受賞を機に、藤井は放送音楽を中心に作曲・指揮活動に本格的に取り組み始めます。

多彩な作品群

藤井の作品は、邦楽器を用いた楽曲から、合唱曲、オーケストラ作品まで多岐にわたります。代表作には、「東洋の楽器による交響曲・西遊記」（1967年文部省芸術祭レコード部門受賞）、「絲竹交響」、「伊勢物語抄」などの邦楽器楽曲、「北原白秋の詩による9つのカノン」、「筑紫のわらべ唄」などの合唱曲があります。また、NHK教育テレビ「みんなの音楽」、「日本の楽器」、NHK総合テレビ人形劇「新八犬伝」など、テレビ・ラジオ番組の音楽も数多く担当しました。

指揮者としての活動

1965年には、邦楽器によるオーケストラ「日本合奏団」を結成し、常任指揮者に就任しました。彼は、邦楽器の可能性を追求し、新たな音楽表現の道を切り開きました。

教育者としての貢献

藤井は、教育者としても多大な貢献をしました。1958年から亡くなるまで、NHK邦楽技能者育成会、西日本邦楽合奏団、日本当堂音楽育成会で講師を務め、多くの音楽家を育成しました。また、母校である九州大学男声合唱団コールアカデミーの常任指揮者も務め、プロ、アマチュアを問わず、幅広い音楽団体の育成に尽力しました。

音楽学者の小泉文夫は、藤井を「洋楽と邦楽のどちらの出身か分からないほど捉えどころのない怪物的な存在であり、東洋への激しい情熱と深い探求心を持っている」と評しています。この言葉は、藤井の音楽家としてのユニークな個性をよく表していると言えるでしょう。

NHK邦楽技能者育成会での指導

藤井は、NHK邦楽技能者育成会において、五線譜や合奏指導を担当しました。尺八奏者の横山勝也は、藤井の講義を「当時の育成会の目玉」と評し、邦楽家が苦手とする五線譜の指導に厳しくも熱心に取り組んだと述べています。藤井は、育成会の講師として、病床からも生徒にメッセージを送るなど、最後まで邦楽演奏家の育成に力を注ぎました。

九州大学男声合唱団コールアカデミーとの関わり

藤井は、旧制福岡高等学校時代に音楽部に入部し、後にプロの指揮者となる荒谷俊治と出会いました。この音楽部が、後の九州大学男声合唱団コールアカデミーの前身の一つです。藤井は、大学卒業後、上京し作曲活動を始めましたが、1969年からは同合唱団の常任指揮者として、後輩たちの指導にあたりました。藤井の逝去後、九大コールアカデミーによる京大・北大とのジョイントコンサートの合同ステージは、彼の遺志を継ぎ、別の指揮者によって行われました。

晩年

1994年7月24日、藤井は63歳でその生涯を閉じました。その功績を称え、同日銀杯が贈られました。

藤井凡大は、作曲家、指揮者、教育者として、日本の音楽界に大きな足跡を残しました。彼の音楽は、今もなお多くの人々に愛され、その功績は永遠に語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索