藤井徳昭

藤井徳昭（ふじい のりあき、生年不明 - 元禄7年11月23日（1695年1月8日））は、江戸時代前期に活躍した武士です。通称として藤井紋太夫（ふじい もんだゆう）の名でも知られています。

彼は元々、旗本・荒尾久成の四男として生まれました。その後、水戸徳川家に仕える親戚の老女、藤井氏の養子となります。彼の兄には旗本の荒尾久次、荒尾成継がおり、伯父には鳥取藩家老の荒尾成利、荒尾嵩就、和田三正がいました。

養子縁組後、藤井徳昭は水戸藩2代藩主・徳川光圀に小姓として仕え、その才能と人柄で光圀に重用されるようになります。順調に出世を重ね、延宝6年（1678年）には小姓頭、天和元年（1681年）には中老、貞享4年（1687年）には大番頭と、着実に地位を上げていきました。光圀が隠居した後も、3代藩主・徳川綱條に引き続き仕え、元禄6年（1694年）には禄高800石の大老という要職にまで昇りつめます。

しかし、元禄7年11月23日（1695年1月8日）、小石川水戸藩邸で催された能の会において、悲劇が起こります。なんと、藤井徳昭は光圀自身の手によって刺殺されてしまったのです。この突然の出来事は、水戸藩内外に大きな衝撃を与えました。

光圀が徳昭（紋太夫）を殺害した理由については、様々な説が存在します。講談や小説、時代劇などでは、徳昭が光圀失脚を企む柳沢吉保に内通したためなどとされることが多いですが、真相はいまだに謎に包まれています。

興味深いのは、能役者の家柄である松田家に伝わる記録です。十四世・喜多六平太に芸を仕込んだ松田亀太郎は、水戸家に抱えられており、藤井紋太夫が誅殺された場面の記録を語り伝えていました。それによると、当日の能の演目は「鍾馗」の半能で、徳川光圀は面をかけないで演ずることにしたといいます。鏡の間で出番を待つ間に、光圀は人払いをして紋太夫を呼び出し、自らが「鍾馗」を演ずる気持ちや、鍾馗が古の忠臣烈士であることを説き、出番の知らせを受けると同時に立ち上がって平伏していた紋太夫の首を打ち落としたとされています。そして、「おう鬼神に横道なしといふに、なんぞみだんに騒がしく、帝都に乱れ天子を悩まし」と謡いながら舞台に出ていったというのです。しかし、この貴重な文献は残念ながら行方不明となってしまっています。

藤井紋太夫は、その劇的な生涯から、多くの作品に登場しています。

藤井紋太夫を演じた俳優

月形龍之介（『梅里先生行状記 龍神剣』、1942年）
佐藤慶（『水戸黄門 第1部』、1969年）
横森久（『元禄太平記』、1975年）
高城淳一（『峠の群像』、1982年）
大出俊（『水戸黄門 第29部』、2001年）
小倉一郎（『水戸黄門 第43部』、2011年）

参考文献
鈴木暎一著 人物叢書「徳川光圀」

関連項目
水戸黄門 (パナソニック ドラマシアター)

もう一度検索