藤原兼茂

藤原兼茂 (ふじわら の かねもり)

藤原兼茂は平安時代前期に活躍した公卿および歌人で、藤原北家良門流に属します。彼は右近衛中将である藤原利基の四男であり、その家系は平安貴族の中で重要な役割を果たしました。官位は従四位下・参議にまで昇進し、その生涯には多くの歴史的な出来事が刻まれています。

経歴

兼茂の経歴は、彼自身が醍醐天皇の外戚にあたることから始まります。寛平9年（897年）、天皇の即位に伴い、兼茂は六位蔵人としての役職を得ます。翌年には左衛門少尉に任命され、官僚としてのキャリアをスタートさせました。昌泰2年（899年）には従五位下に叙爵され、さらには昌泰の変が発生した後の延喜2年（902年）には従五位上と播磨介に任命されます。これにより、兼茂は地方官としての職務も担うことになります。

延喜9年（909年）には、左大臣の藤原時平が亡くなったため、兼茂は翌年の延喜10年（910年）に左近衛少将として京官に復帰します。この後も彼は、左近衛権中将、さらに左近衛中将、左兵衛督といった役職を歴任し、延喜14年（914年）には正五位下、延喜17年（917年）には従四位下と昇進を果たしました。

しかし、兼茂の生涯は短く、延喜23年（923年）の正月には参議に任命されつつも、同年2月に中風に倒れ、3月7日に亡くなります。最終的に、彼の官位は参議従四位下兼左兵衛督で終わりました。

人物

藤原兼茂は歌人としても知られ、彼の和歌は『古今和歌集』に2首、『後撰和歌集』に1首掲載されています。特に、彼は源実と共に山城国と摂津国の境で歌の贈答を行ったエピソードがあり、和歌の世界でも活躍していたことが伺えます。また、延喜11年（911年）には宇多上皇主催の酒合戦においても登場し、その酒豪ぶりが評価されています。

官歴

藤原兼茂の官歴は次の通りです。

• - 寛平9年（897年） 7月5日：讃岐掾。7月7日：六位蔵人
• - 寛平10年（898年） 正月29日：左衛門少尉
• - 昌泰4年（901年） 正月7日：従五位下。2月27日：如故昇殿
• - 延喜2年（902年） 2月24日：従五位上。4月23日：兼播磨介
• - 延喜10年（910年） 正月12日：兼左近衛少将
• - 延喜14年（914年） 正月7日：正五位下
• - 延喜15年（915年） 正月12日：兼備前介
• - 延喜16年（916年） 3月28日：左近衛権中将
• - 延喜17年（917年） 正月7日：従四位下。正月19日：昇殿。正月29日：兼播磨権守。4月5日：兼斎院長官
• - 延喜18年（918年） 2月29日：左近衛中将
• - 延喜19年（919年） 9月13日：兼左兵衛督（停中将）
• - 延喜23年（923年） 正月12日：任参議、左兵衛督如元。3月7日：卒去（参議従四位下兼左兵衛督）

系譜

藤原兼茂の家系については、父が藤原利基、母は当麻松咸の娘とされています。また、妻については不明ですが、子供として男子の藤原存忠と女子の兵衛命婦が記録されています。

藤原兼茂の生涯は、平安時代中期の政治と文化を反映する重要なものです。彼の歌や官歴は、当時の貴族社会を理解するための貴重な資料となっています。

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