藤原家成

藤原家成：鳥羽上皇の寵臣とその波乱の人生

藤原家成は、平安時代末期を代表する公家の一人です。参議・藤原家保の三男として生まれ、正二位・中納言にまで上り詰めました。中御門を号し、鳥羽上皇の絶対的な信頼を得て、権勢を誇りました。

家成は藤原北家魚名流の出身であり、鳥羽院政期において、鳥羽上皇の側近として活躍しました。その勢力は絶大で、美福門院らと共に政治の中枢を担い、全国各地に広大な荘園を所有するなど経済的な力も持ち合わせていました。

家成の権勢を示すエピソードとして、長承元年（1132年）に起こった平等院経蔵の出来事が挙げられます。上皇が平等院の経蔵を見学した際、藤原忠実は門外不出の経蔵に誰一人入れない方針を取っていましたが、家成だけは特別に中に入ることを許されました。その後、家成は鳥羽殿に勝光明院と宝蔵を建設する際に、この経蔵を参考にしています。

しかし、家成の絶大な権勢は、常に周囲の警戒の対象でもありました。特に、藤原頼長は家成の勢力を危惧し、その言動を批判的に見ていました。天養2年（1145年）、家成が比叡山に登る際に、義弟の源雅通と娘婿の藤原公親を前駆として従えたことを、頼長は「英雄の名を失う」と非難しています。この出来事は、後に家成と頼長の対立を深める要因の一つとなりました。

仁平元年（1151年）、頼長は家成の邸宅を襲撃し、徹底的に破壊するという暴挙に出ます。この事件は、鳥羽法皇の激怒を買い、頼長の失脚、そして保元の乱へとつながる大きな出来事となりました。家成の邸宅襲撃は、頼長の短絡的な行動が招いた結果であり、保元の乱勃発の遠因となったのです。

家成は、父・家保とは対照的な道を歩みました。家保は白河法皇の側近でしたが、家成は鳥羽法皇の庇護を受け、白河法皇派の排除に協力することで、自らの地位を築き上げました。その結果、兄の顕保は家成の昇進を妨害され、播磨守で生涯を終え、他の兄弟も保元の乱で没落しました。家成が鳥羽上皇の側近として地位を固めていたことは、白河法皇崩御の翌月には鳥羽殿の預に任じられたという記録からも明らかです。

家成は平忠盛・清盛父子とも親交が深く、清盛は若かりし頃、家成の邸宅に頻繁に出入りしていたと言われています。清盛の長男・重盛が家成の娘を正室に迎えたのを始め、両家にはいくつもの姻戚関係がありました。また、忠盛の正室である池禅尼は家成の従姉にあたります。

家成は優れた歌人としても知られ、『詞花和歌集』と『続拾遺和歌集』に作品が採録されています。

仁平4年（1154年）、家成は飲水病（糖尿病）の悪化により亡くなりました。生前に建立した山荘兼寺院に葬られ、その子孫は四条家、山科家といった名家として繁栄しました。藤原家成は、鳥羽上皇の寵臣として栄華を極めながらも、周囲との対立や病魔に苦しんだ、波乱に満ちた生涯を送った人物だったと言えるでしょう。彼の生涯は、平安時代末期の政治状況や権力闘争を理解する上で重要な手がかりとなります。

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