詞花和歌集

詞花和歌集：崇徳院の遺志と和歌の革新

『詞花和歌集』は、平安時代後期の勅撰和歌集であり、八代集の第六集に位置づけられます。1144年（天養元年）に崇徳院によって編纂が命じられ、藤原顕輔がその編集者として尽力しました。編纂期間は1150年（久安6年）から1152年（仁平2年）にかけてであり、全10巻、409首の歌が収められています。古写本によっては『詞華和歌集』と表記される場合もあります。

編纂と歌風

藤原清輔の『袋草紙』には、詞花和歌集に409首の和歌が収録されていると記されています。歌集の構成は、春、夏、秋、冬、賀、別、恋（上下）、雑（上下）の部立となっています。

編纂にあたっては、様々な歌集が資料として用いられました。『玄々集』（65首）、三奏本『金葉和歌集』（63首、ただし44首は共通）、『堀河院御時百人一首』（11首）、『久安六年御百首』（4首）などから歌が選ばれました。

収録されている歌人の顔ぶれを見ると、『後[[拾遺和歌集]]』の時代に活躍した歌人が多くを占めています。例えば、曾禰好忠（17首）、和泉式部（16首）、大江匡房（14首）などがその例として挙げられます。

『詞花和歌集』の歌風は、清新な表現が特徴的であると評価される一方で、軽妙洒脱で、ざれ歌のようなユーモラスな歌も数多く含まれている点が注目されます。

歴史的意義と影響

『詞花和歌集』は、六条藤原家が単独で選者となった唯一の勅撰和歌集であるという点で、歴史的に特筆すべき存在です。三奏本『金葉和歌集』からの影響を色濃く受け継ぎつつ、後の『千載和歌集』へと繋がる重要な役割を果たしました。

しかし、成立当初からその内容について批判的な意見も存在しました。崇徳院自身も、歌集の改撰を望んでいたと伝えられていますが、藤原清輔の急死によって、その願いは叶うことはありませんでした。

『詞花和歌集』に対する反動として、藤原教長による『拾遺古今』や藤原為経による『後葉和歌集』といった歌集が編まれたという背景も、この歌集の特異な位置づけを物語っています。

校注本

『詞花和歌集』は、長年に渡って様々な研究者によって校注され、現代にも多くの版が刊行されています。代表的な校注本としては、以下のものがあげられます。

『詞華和歌集』（松田武夫校訂、岩波文庫、1939年、新装復刊1994年）
『八代集3』（奥村恒哉校注、平凡社東洋文庫、1987年、ワイド版2008年）
『新日本古典文学大系9　金葉和歌集／詞花和歌集』（岩波書店、1989年）
改訂版『詞花和歌集』（工藤重矩校注、岩波文庫、2020年）ISBN 4003003195
『和歌文学大系34　金葉和歌集／詞花和歌集』（錦仁校注、明治書院、2006年）

これらの校注本は、それぞれ異なるアプローチや解釈に基づいて編集されており、『詞花和歌集』を多角的に理解する上で貴重な資料となっています。 また、国際日本文化研究センターによる「詞花集和歌データベース」も、研究に役立つ重要なリソースです。

関連事項

続詞花和歌集

もう一度検索