藤原貞主

藤原貞主（ふじわら の さだぬし）は、平安時代初期に活躍した貴族です。藤原北家の出身で、参議である藤原楓麻呂の孫にあたります。父は三河守を務めた藤原園主です。貞主は、その生涯において従四位下・近江権守という官位にまで昇りつめました。別名として、真主（さだぬし）とも記されています。

経歴

貞主は、嵯峨天皇の時代末期である弘仁13年（822年）に従五位下に叙爵され、官僚としてのキャリアをスタートさせました。その後、淳和天皇の時代から仁明天皇の時代初頭にかけて、具体的な任官の記録は多くないものの、様々な官職を歴任し、どの職においても優れた業績を上げたと伝えられています。

仁明天皇の治世においては、承和3年（836年）に従五位上、承和6年（839年）には近江権介に任命され、承和8年（841年）には正五位下・近江介に叙任されています。特に、近江介の職務中に起こった承和9年（842年）の承和の変では、近江国逢坂関の警固にあたり、その功績により従四位下・近江権守に昇進するなど、仁明天皇の時代には近江国の国司として重要な役割を果たしました。

承和11年（844年）9月16日、貞主は70歳でその生涯を閉じました。最終官位は近江権守従四位下でした。

人物

貞主は、温和で聡明な人物として知られており、政務を円滑に進める能力に長けていました。たとえ多くの書類が積み重なり、複雑な事務が滞っているような状況でも、彼は酒を飲むことを楽しみ、酔うことでむしろ頭が冴え、滞りなく職務を処理することができたといわれています。その様子は、まるで水が流れるようであったと伝えられています。そのため、同僚の役人や民衆は、貞主が酔っている時でも、彼を欺くようなことは決してなかったとされています。この逸話からも、貞主が周囲から深く信頼されていたことがうかがえます。

官歴

以下は、『六国史』に記録された貞主の官歴です。

時期不詳：正六位上
弘仁13年（822年）10月1日：従五位下
承和3年（836年）1月7日：従五位上
承和6年（839年）9月7日：近江権介
承和8年（841年）2月6日：近江介、11月20日：正五位下
承和9年（842年）7月25日：従四位下、8月11日：近江権守
承和11年（844年）9月16日：卒去（近江権守従四位下）

脚注

出典：森田悌『続日本後紀 （下）』講談社〈講談社学術文庫〉、2010年

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