藤吉隆雄

藤吉隆雄（ふじよし たかお）氏は、写真家としての確かな技術と、科学技術ジャーナリストとしての深い洞察力を兼ね備え、さらにアカデミアでの教育・研究活動にも精力的に取り組む、多才な人物です。そのキャリアは、報道写真から科学コミュニケーション、そして教育現場まで、幅広い分野に及んでいます。

氏は、陸上自衛隊と航空自衛隊の基地が共存する地域で育ち、父方の親族には自衛官が多いという環境で少年時代を過ごしました。この背景が、後のキャリアに何らかの影響を与えた可能性も考えられます。

学業においては、千葉大学工学部で画像工学科を卒業し、写真や映像に関する専門知識の基礎を築きました。その後、早稲田大学大学院政治学研究科に進学し、異なる分野である政治学を修めるという、ユニークな経歴を持っています。

プロフェッショナルとしてのキャリアは、スチールカメラマンとして18年間、科学技術ライターとして8年間にわたる経験に裏打ちされています。これらの活動を通じて、被写体の本質を捉える写真の力と、複雑な科学技術を分かりやすく伝える文章力を磨きました。また、過去にはカメラグランプリの選考委員を務めるなど、写真業界における専門性も高く評価されています。

藤吉氏のキャリアの中でも特筆すべきは、カタールの国際的な報道機関であるアルジャジーラでの活動です。世界科学ジャーナリスト連盟傘下の各国協会との交流プログラムの一環として、アルジャジーラTVに約4週間滞在し、現地のスタッフに対し撮影技術などを指導しました。この経験は、2013年4月時点で日本人としては彼ただ一人であったと記録されており、国際的な舞台で活躍した貴重な事例と言えます。

アカデミアでの活動も多岐にわたります。2010年度から2013年度にかけては、名古屋大学で特任助教を務め、この間、あいちサイエンスフェスティバルのコーディネーターとしても地域の科学イベントの企画・運営に貢献しました。

続いて2014年度から2017年度までは、北海道大学に特任准教授として在籍。特に「北海道大学物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラム」のプログラム教員として、次世代の研究者育成に携わりました。ここでは、博士課程教育リーディングプログラム推進室で科学技術コミュニケーション教育を担当し、また広報企画推進室では広報企画に関する調査研究を行うなど、大学の教育・研究と社会との連携を強化する役割を担いました。

さらに2018年4月からは、お茶の水女子大学の全学教育システム改革推進本部リーディング大学院推進センターにて特任講師を務め、教育システムの改革推進に貢献しました。同年10月からは、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所に特任専門員として所属し、情報学分野の研究教育支援に携わりましたが、この職は2023年9月をもって離れています。

現在は、津田塾大学総合政策研究所にて特任研究員として、新たな視点での研究活動に取り組んでいます。

専門分野は、科学技術と社会の関係を考察する科学技術社会論、報道に関わるジャーナリズム、そして写真といった氏のキャリアの根幹をなす領域に加え、意外なことに日本マンガ学会にも名を連ねており、その関心の幅広さを示しています。また、日本科学技術ジャーナリスト会議や日本写真協会の会員でもあります。

カメラマンとして世界を駆け巡り、科学技術の進歩を見つめ、教育者として次世代を育成し、研究者として知的好奇心を探求するなど、藤吉隆雄氏のキャリアパスは非常にユニークかつ多様であり、それぞれの分野で培われた経験が、現在の活動に活かされています。

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