藤本勝彦

藤本勝彦：華麗なる騎手人生と影の事件

1930年北海道に生まれた藤本勝彦氏は、名門の血を引くサラブレッドのような存在だった。父は調教師の藤本冨良氏であり、氏は父の影響を強く受け、1950年、騎手免許を取得してデビュー。父の厩舎に所属し、華麗なる騎手人生の幕を開けた。

デビューから間もなく、1950年5月3日の中山オープンで初勝利を飾る。その後、1961年にはヤマニンモアーで金杯（東）を制し、重賞初制覇。そして1962年には、オーハヤブサに騎乗し、優駿牝馬（オークス）を制覇。これは氏にとってキャリア唯一のGI級レース制覇であり、輝かしい経歴に新たな1ページを刻んだ。

藤本氏は、感情豊かな騎乗スタイルと、果敢なレース運びで知られていた。恵まれた環境と才能を兼ね備え、毎年20勝前後を挙げる活躍を見せ、日本[[騎手クラブ]]関東支部長も務めた。東京優駿（日本ダービー）では勝利こそなかったものの、2着2回、3着1回という好成績を残し、その実力を証明した。特に、1963年、1967年、1971年の日本ダービーでは、それぞれ人気薄の馬を好走に導き「ダービーの穴男」と呼ばれた。1971年には自己最多の29勝を挙げ、全国リーディングでも自己最高の21位にランクインした。

しかし、氏の輝かしい経歴に終止符を打つ出来事が起きた。1972年9月、八百長事件への関与が発覚。知人からの依頼で、レース結果を操作する行為に関与し、賄賂を受け取っていたことが明らかになった。その後、複数の八百長に関与していたことを自供。1973年10月10日に逮捕されたものの、証拠不十分により10月31日に釈放された。しかし、日本中央競馬会から1974年2月28日までの騎乗停止処分を受け、事実上、騎手としてのキャリアは幕を閉じた。

騎手引退後は、静岡県御殿場市の富士牧場公園や、千葉県長生郡睦沢町の西山牧場一宮トレーニングセンターで勤務した。その後、消息は不明となっている。

藤本勝彦氏の生涯は、成功と挫折の両面を鮮やかに描き出した、ドラマチックな物語である。数々の名馬に騎乗し、数々の栄光を掴んだ一方、八百長事件という暗い影を背負い、その華麗な騎手人生は、突如として幕を閉じた。現在、氏の消息は不明だが、その名と功績は、競馬史に深く刻み込まれている。

主な騎乗馬

ヤマニンモアー（1961年金杯(東)）
オーハヤブサ（1962年京成杯、優駿牝馬）
ムネヒサ（1967年日本短波賞）
アタックブルー（1969年ステイヤーズステークス）
ケンサチオー（1971年スプリンターズステークス）
マミーブルー（1972年京成杯3歳ステークス）

参考文献

* 朝日新聞縮刷版、1973年10月号・11月号

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