藤村作

藤村作：近世文学研究のパイオニア

藤村作（ふじむら つくる、1875年 - 1953年）は、明治から昭和にかけて活躍した日本を代表する国文学者です。福岡県柳川市に生まれ、東京帝国大学で国文学を専攻しました。第五高等学校、橘蔭学館（のちの福岡県立伝習館高等学校）を経て、1901年に東京帝国大学文科大学国文学科を卒業。その後、第七高等学校造士館教授、広島高等師範学校教授などを歴任し、1910年には東京帝国大学国文学科助教授に就任、1922年には教授に昇進しました。

教育者としての貢献

藤村は東京帝国大学において、それまで好事家による趣味の領域にとどまっていた近世文学を本格的な学問研究の対象として確立するのに貢献しました。東京大学で初めて近世文学の講義を担当し、多くの学生に影響を与えたことは特筆すべきでしょう。

教育者としての活動は、東京帝国大学にとどまりませんでした。1934年には東洋大学の学長を兼任。1936年に東京帝国大学を定年退職した後も、北京大学（汪兆銘政権下）で教鞭を執るなど、精力的に教育活動に携わりました。戦後には、関東女子専門学校（現・関東学園大学）名誉学長、二松学舎大学教授、大正大学教授なども務めています。

研究者としての業績

藤村の研究分野は主に近世文学です。数々の著作を発表し、近世文学研究に多大な貢献をしました。代表的な著書には、『上方文学と江戸文学』（1922年）、『国文学史総説』（1926年）、『近世国文学序説』（1927年）、『本居宣長』（1936年）、『日本文学と日本精神』（1936年）などがあります。また、『日本文学大辞典』（1932年-1935年）の編纂にも携わっています。さらに、近世文学研究者としての功績を称え、記念論集『近世文学の研究 藤村博士功績記念会』（1936年）が出版されています。晩年には、西鶴全集の翻訳・注釈にも取り組んでいます。

学会活動と社会貢献

藤村は、学術団体への貢献も著しく、1924年には雑誌『国語と国文学』を創刊。さらに、1934年には国語教育学会を創立し、1936年には日本文学協会を創立して初代会長に就任するなど、日本の国文学界の発展に尽力しました。

その他の活動

研究活動や教育活動に加え、藤村は複数の学校校歌の作詞も手掛けています。大倉高等商業学校（現東京経済大学）、徳島高等工業学校（現徳島大学）、第二東京市立中学校（現東京都立上野高等学校）、長野県立伊那中学校（現長野県伊那北高等学校）、秋田県立能代中学校（現秋田県立能代高等学校）など、数多くの学校で藤村作作詞の校歌が歌われています。

家族

藤村作の長女は近藤宮子、婿は近藤忠義、次男は赤城さかえです。興味深いことに、『日本文学原論』（1937年）は、実は婿である近藤忠義の著作でした。

まとめ

藤村作は、教育者、研究者、社会活動家として多方面で活躍した、20世紀を代表する国文学者の一人です。近世文学研究における先駆的な業績、国語教育への貢献、そして数々の著作や校註は、現代の日本の国文学界に大きな影響を与え続けています。彼の生涯と業績は、これからも後世に語り継がれるべきものです。

もう一度検索