藤村雅美

藤村雅美（ふじむら まさみ、旧名・正美）氏は、1950年2月1日に生を受け、2007年10月26日に57歳で逝去した、日本の元野球選手であり高校野球の指導者です。

プロ野球界で一世を風靡した「ミスタータイガース」藤村富美男氏を父に持ち、名投手であった藤村隆男氏を伯父に持つという、まさに野球の血筋を受け継いで生まれました。

選手としての歩み

兵庫県の三田学園高等学校に進学後、2年生の秋から三塁手および控え投手としてチームの主力となります。打撃ではクリーンアップを担い、同期の主戦投手である吉岡邦広氏らと共に、1967年春の選抜高等学校野球大会に出場。初戦では大田垣耕造投手（のちプロ）擁する尾道商業高校を退けましたが、2回戦では熊本工業高校の松本正幸投手（のち巨人）に抑え込まれ、惜しくも1対2で敗退しました。同年夏の全国高校野球選手権兵庫県予選では決勝まで進むも、報徳学園高校に敗れ、甲子園への連続出場はなりませんでした。高校卒業時には、同年のドラフト会議で東京オリオンズ（現・千葉ロッテマリーンズ）から5位指名を受けましたが、これを辞退して大学へ進学します。

法政大学へ進むと、その風貌やプレースタイルが父・富美男氏に似ていることから注目を集め、神宮球場のスタンドを賑わせました。大学野球の名門である法政大学野球部では、最終学年で主将を務め、リーダーシップを発揮。東京六大学野球リーグでは、1969年秋季リーグから前人未踏の4季連続優勝という快挙に貢献しました。個人としても三塁手として二度、ベストナインに選ばれるなど、走攻守にわたる高い実力を示しました。当時のチームメイトには、横山晴久氏、古賀正明氏、中村裕二氏、依田優一氏といった、後に各分野で名を馳せる選手たちがいました。

大学卒業後は、社会人野球の強豪である鐘淵化学（カネカ）に入社。ここでも三塁手としてチームの中心選手として活躍し、都市対抗野球大会の常連チームとして貢献しました。特に1975年に開催された第2回社会人野球日本選手権大会では、四番打者としてチームを牽引。宮田典計投手の好投もあり、チームを初の日本一へと導きました。この大会での顕著な活躍により優秀選手に選ばれ、同年の社会人野球ベストナイン（三塁手）にも輝きました。さらに1976年には、第24回アマチュア野球世界選手権大会の日本代表に選出され、国際舞台も経験しています（この大会では外野手としても起用されました）。その後、大阪ガスに移籍し、野球を続け、1981年の都市対抗野球大会では、選手としての10年連続出場に対する記念表彰を受けました。

指導者としての活動と晩年

現役引退後、1999年に新たな挑戦の機会が訪れます。大阪ガスを退職し、兄・哲也氏の母校であり、当時長男・光司氏が在学していた育英高等学校（兵庫県）から野球部監督就任の要請を受け、同校の職員として監督に就任しました。監督就任から間もない2000年春には、捕手としてプレーしていた長男の光司氏や、後にプロ野球界で活躍する栗山巧選手らを擁し、チームを甲子園出場に導きました。同年夏にも連続で甲子園の土を踏み、チームは躍進。見事ベスト4進出という好成績を収めました。その後も、2005年春の選抜大会で再び甲子園出場を果たすなど、監督として育英高校野球部の強化に尽力しました。育英高校監督としての甲子園通算成績は、出場3回で4勝3敗です。

しかし、2006年夏に野球部内で発生した不祥事の責任を取り、監督を辞任しました。指導者の道を離れた後、2007年4月3日に脳梗塞で倒れてしまいます。その後、4度にわたる手術を受けるなど懸命な治療が施されましたが、容態は回復せず、同年10月26日、帰らぬ人となりました。57歳という若さでの死去でした。父・藤村富美男氏と同じく、その生涯を野球に捧げた人物として、多くの人々の記憶に残っています。

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