藤田敬一

藤田敬一：中国史と部落問題研究の交錯

藤田敬一（1939年1月10日 - ）は、中国史研究者、そして部落問題研究者として知られています。元岐阜大学教授であり、その研究活動は、日本の部落問題における複雑な側面を浮き彫りにしました。

生い立ちと研究への目覚め

京都市下京区に生まれた藤田は、幼少期に父親から部落差別意識の影響を受けました。1958年、京都大学入学後、部落問題研究所を訪れ、朝田善之助との出会いをきっかけに、部落問題研究に足を踏み入れます。京都市内の同和地区の視察を通じて、問題の реальность を目の当たりにし、研究への決意を固めました。

1962年に京都大学文学部史学科（東洋史学専攻）を卒業後、大学院に進学。1968年に博士課程を修了しました。1970年からは岐阜大学教育学部で教鞭を執り、歴史学・人権教育を担当しました。

部落解放運動との関わりと決別

当初、藤田は部落解放同盟の運動に外部出身者として参加しました。しかし、1970年、「狭山差別裁判糾弾闘争に連帯する会」をめぐる出来事をきっかけに、運動からの疎外感を経験します。被差別部落出身者からの批判や、部落出身ではないという理由で差別者扱いされるなど、苦悩を味わいました。これらの経験が、部落問題に対する彼の見方を大きく変えることになります。

『同和はこわい考』とその反響

1987年、藤田は『同和はこわい考』を出版し、部落解放同盟の理論や運動に対する批判を展開しました。この著書は、部落解放同盟から「差別思想の持ち主」として非難されるなど、大きな反響を呼びました。藤田は、差別問題における「痛みを知っている被差別者」という特権的な立場が、対話の断絶や責任転嫁を生んでいると指摘しました。

著作一覧

単著

『同和はこわい考 地対協を批判する』阿吽社 あうん双書 1987

編著

『被差別の陰の貌 おかさん』編 阿吽社 1994
『部落史を読む』師岡佑行共編 阿吽社 1998
『「部落民」とは何か』編 阿吽社 1998

翻訳

『世界の名著 64』毛沢東「抗日遊撃戦争の戦略問題」「中国共産党全国宣伝活動会議における講話」中央公論社 1969
毛沢東『遊撃戦論』吉田富夫共訳 中公文庫　2001
『抗日遊撃戦争論 改版』小野信爾, 吉田富夫共訳 中公文庫 2014
胡縄『中国近代史 1840-1924』小野信爾,狭間直樹共訳 平凡社 1974

藤田敬一の研究が問いかけるもの

藤田敬一の研究は、部落問題における固定観念やタブーに切り込み、問題の本質を問い直すものです。彼の視点は、部落問題の解決に向けて、より多角的な議論を促す上で重要な意義を持っています。

彼の著作や研究活動は、部落問題に関心を持つ人々にとって、貴重な示唆を与えてくれるでしょう。

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