師岡佑行

師岡佑行：激動の時代を生きた日本史学者と部落解放運動家

師岡佑行（1928年10月21日-2006年6月12日）は、20世紀後半の日本社会を揺るがした数々の出来事に身を投じ、日本史学者として、そして部落解放運動家として重要な役割を果たした人物です。神戸市生まれ、尼崎市育ち。師岡氏の生涯は、戦後の日本社会の複雑な歴史と深く結びついています。

教育者としての出発とレッドパージ

師岡氏は、代用教員として尼崎市立長洲小学校に勤務していましたが、1949年、マッカーサーによるレッドパージの波に巻き込まれ、退職勧告を受けます。父兄からの強い支持と1200筆にも及ぶ反対署名が集まりましたが、解職は覆らず、その後の師岡氏の活動に大きな影を落とすことになります。

朝鮮戦争反対と逮捕、そして学問への道

1951年には、朝鮮戦争に反対する活動が占領軍政策違反として逮捕・起訴されるという事態に直面します。しかし、対日講和条約の発効により免訴となり、自由を取り戻します。この経験は、師岡氏をして社会正義への強い思いをさらに深めさせたと言えるでしょう。その後、立命館大学文学部日本史専攻に編入学。奈良本辰也教授に師事し、1959年に同大学院を修了します。

安保闘争から部落解放運動へ

1960年の安保闘争では樺美智子を支持する立場を取り、政治的な活動にも積極的に関与します。1961年には日本共産党の東尼崎診療所オルグに反対し、除名処分を受けるなど、師岡氏の活動は常に時代の最先端にありました。立命館大学講師を経て、1969年には全共闘を支持して大学を辞職。その後は、大阪矢田診療所で勤務する傍ら、近隣に住む部落解放同盟委員長の朝田善之助氏を助け、1971年には『部落解放同盟・教宣シリーズNo3「矢田教育差別事件」とは何か』を執筆するなど、部落解放運動との関わりを深めていきます。

部落解放運動への貢献と『京都の部落史』

1973年には、部落解放同盟本部機関紙「解放新聞」の主筆に就任。1975年に辞任した後も、部落問題への取り組みを続け、1977年には京都部落史研究所を設立し所長に就任。研究所の主要事業として取り組んだ『京都の部落史』全十巻の編纂は、師岡氏の研究者としての力量と、部落解放運動への貢献を象徴する業績です。さらに、戦後部落問題の理論的変遷を総括的に扱った『戦後部落解放論争史』全五巻（柘植書房、1980〜1985年）を著し、この分野における重要な研究を残しました。

晩年と最期

2000年6月に京都部落史研究所閉鎖に伴い所長を辞任。2003年には、後身の京都部落問題研究資料センター所長である灘本昌久氏の論文に反論する論文を発表し、激しい論争を巻き起こしました。最終的に灘本氏は所長を辞任に追い込まれましたが、師岡氏の信念の強さを示すエピソードと言えるでしょう。2006年、那覇市の自宅アパートのあるビルから転落死。自殺か事故か、現在も議論の的となっています。

師岡佑行氏の遺産

師岡佑行氏は、歴史学者として、そして部落解放運動家として、時代を駆け抜けた稀有な人物でした。彼の生涯と研究は、戦後日本の歴史と社会運動を理解する上で欠かせないものです。レッドパージ、安保闘争、部落解放運動など、さまざまな出来事の中で常に正義を追求し続けた師岡氏の生き様は、現代社会に生きる私たちにとっても、大きな示唆を与えてくれるでしょう。彼の著作は、これからも多くの人々に読み継がれ、研究され続けることでしょう。

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