朝田善之助

朝田善之助：激動の部落解放運動家

朝田善之助（1902年5月25日 - 1983年4月29日）は、日本の部落解放運動家であり、会社経営者としても知られています。彼は部落解放同盟の中央執行委員長を務めるなど、戦前・戦後を通じて部落解放運動に深く関わりました。その生涯は、運動の発展に貢献する一方で、組織内の対立や利権問題など、多くの困難に直面するものでした。

生い立ちと社会運動への目覚め

朝田は京都府愛宕郡田中村（現在の京都市左京区）の被差別部落で生まれました。父は草鞋の製造販売や共同浴場を営んでいました。小学校卒業後、靴店で奉公に出ますが、1918年の米騒動をきっかけに社会運動に目覚めます。1922年には全国水平社の創立大会に参加し、部落解放運動に身を投じることになります。

全国水平社での活動と転換

1928年、朝田は知人男性の拉致行為に加担したとして警察に拘束されます。この事件は、彼の運動における過激な側面を示す出来事でした。同年、三・一五事件の後、全国水平社本部の再建に尽力し、1940年まで幹部を務めました。しかし、1931年には全国水平社解消意見を提出するなど、その運動方針は常に議論の的となりました。1940年には、北原泰作らと時局便乗の部落厚生皇民運動を組織したことで、全国水平社から除名処分を受けるという転換期を迎えます。

戦後の部落解放運動

終戦後、朝田は上田音市、松田喜一らと部落解放運動の再建を協議し、1946年には部落解放全国委員会の結成に参加、京都府連合会の委員長に就任しました。当初は日本共産党と連携して活動しましたが、自身が経営する会社の内紛をきっかけに1949年に離党しました。1951年には、朝鮮人部落を差別的に描いた小説「特殊部落」に対する抗議活動を指導し、行政闘争路線を活発化させます。1965年には、部落解放同盟内部で社会党系幹部と共産党系幹部が対立する中、朝田は社会党系幹部からの接近を受け、同年の大会で主導的な役割を果たします。

部落解放同盟委員長時代と晩年

1967年、朝田は部落解放同盟中央本部の第2代中央執行委員長に就任します。1971年には、部落差別に関する3つのテーゼを定式化し、朝田理論として知られるようになりました。しかし、この頃から、朝田による京都府連の私物化や利権あさりが問題視されるようになり、1973年には反朝田派から暴行を受ける事件も発生しました。1975年、朝田は中央執行委員を解任され、部落解放同盟からも排除されます。その後は、改良住宅家賃値上げ反対同盟を独自に結成し、部落解放運動の主流に復帰することはありませんでした。晩年には、教育財団を設立し、理事長を務めました。

人物像と評価

朝田は、多くの部落解放運動家を育成した一方で、その偏狭な性格や強引な手法から、多くの敵を作ったとも評されています。彼が設立した会社を私物化したとの指摘もあり、その行為は「えせ同和行為」の源流とみなされることもあります。また、「差別者をつくるのは簡単だ」と豪語し、言いがかりとも取れるような糾弾を行うこともありました。朝田の人間性については、その強引なやり方と、スパイ疑惑まで囁かれるなど、多くの批判がありました。

朝田善之助の功績と課題

朝田善之助は、部落解放運動の発展に大きく貢献した一方で、その手法や人物像には賛否両論があります。彼の生涯は、部落解放運動の光と影を映し出す鏡のようなものであり、彼の思想と行動は、現代においても多くの議論を呼んでいます。

朝田の著作には、『差別と闘いつづけて: 部落解放運動五十年』などがあります。

家族

父・幾之助、母・みゑ、長兄・幾松、次兄・伊助。

孫に善三がいます。

参考文献

三省堂編修所編『コンサイス人名辞典 日本編』三省堂、1976年。
朝田善之助『新版 差別と闘いつづけて』朝日新聞社、1979年。

関連項目

朝田理論
エセ同和
岡映
志摩会談
同和利権

外部リンク

財団法人 朝田教育財団

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