藺芳

藺芳（りん ほう）

藺芳は、明代初期に活躍した官僚です。彼の生年は不詳ですが、1417年に亡くなっています。本貫は解州夏県です。

生涯

洪武年間に、孝廉として中央官界に入りました。その後、様々な官職を歴任し、刑部郎中にまで昇進しました。永楽年間になると、地方官として吉安府知府に任命されました。

吉安府知府時代、吉水県で民衆が宮廷に銀鉱の存在を訴えるという事件がありました。藺芳は、県内の有力者たちの訴えに基づき、この銀鉱の話が虚構であることを突き止め、刑事事件として処理することを朝廷に訴えました。しかし、永楽帝は「そのような虚偽の話は最初から見抜いていた」として、この訴えを却下しました。その後、藺芳は事件に連座して弁事官に降格されるという不遇を経験します。

その後、藺芳は工部尚書の宋礼に従い、会通河の改修工事に携わることになり、工部都水主事に任命されました。

1412年（永楽10年）には、黄河が陽武で決壊し、周辺の中牟、祥符、尉氏にまで洪水が及ぶという大災害が発生しました。この事態を受け、藺芳は黄河の決壊現場に派遣され、被害状況の視察にあたりました。彼は、氾濫を食い止めるための重要拠点である中塩堤の増強、中灤から黄河を分流させ、黄河の旧河道を通じて渤海に注ぎ込ませる新たな水路の開削、そして新設する堤防の護岸には横木と瓦石を用いるべきであるという提言を行いました。これらの提言は全て受け入れられ、実行に移されました。

藺芳の治水における能力は高く評価され、宋礼の推薦により、工部右侍郎に抜擢されました。さらに同年11月、行太僕寺卿の楊砥が徳州良店駅東南の黄河旧河道を開き、分水するよう提案すると、藺芳は工事の監督を任されました。

藺芳は、1417年（永楽15年）11月に在官のまま亡くなりました。彼の死は、明朝における治水事業の重要な担い手を失ったことを意味しました。

業績

藺芳の最大の功績は、黄河の治水事業に貢献したことです。彼は、単に堤防を築くだけではなく、黄河の流れを変えるという大規模な治水計画を立案し、実行に移しました。彼の提言は、その後の黄河治水に大きな影響を与えたと言われています。

また、彼は地方官として、民衆の訴えに耳を傾け、不正を暴くという正義感を持った官僚でもありました。その一方で、事件に連座して降格されるという不運も経験しており、彼の官僚としての生涯は決して平坦なものではありませんでした。

藺芳は、明代初期の官僚として、治水事業に尽力した人物として、後世にその名を残しています。

参考文献

* 『明史』巻153 列伝第41

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