虎の尾を踏む男達

映画『虎の尾を踏む男達』

1945年に製作され、1952年に公開された日本[[映画]]『虎の尾を踏む男達』は、黒澤明監督による時代劇作品です。主演には大河内傅次郎と榎本健一が起用され、モノクロのスタンダードサイズで58分の短編映画となっています。この作品は、能の『安宅』と、それを基にした歌舞伎『勧進帳』を融合させ、榎本が演じる道化役の強力のエピソードを加えた喜劇です。黒澤にとって初めての時代劇映画であり、戦後のGHQによる検閲を受けたため、公開が1952年まで待たねばなりませんでした。

あらすじ

作品の物語は、源義経（岩井半四郎）が兄の頼朝から疑いを受け、逃亡を余儀なくされるところから始まります。義経は忠実な家臣たちとともに山伏に身をやつし、奥州へ向かう途中で新たに設けられた関所に差し掛かります。そこで、家臣の武蔵坊弁慶（大河内傳次郎）が「再建のための勧進の旅」と偽り、富樫左衛門に勧進帳を読むように求められます。弁慶は白紙の巻物を勧進帳だと主張し、巧妙に関所を通過します。

主要キャスト

• - 弁慶：大河内傳次郎
• - 富樫：藤田進
• - 強力：榎本健一
• - 亀井：森雅之
• - 片岡：志村喬
• - 義経：仁科周芳（十代目岩井半四郎）

製作の背景

『虎の尾を踏む男達』の製作は、黒澤明が『續姿三四郎』を終えた後に始まります。戦時中で馬の調達が難しかったため、『どっこい！この槍』という計画を変更し、本作を製作することに決しました。脚本は『勧進帳』を基にし、撮影は桶狭間の戦いに集中したセットで行われました。また、周囲の林をロケ地とすることで物資の不足を克服しました。実際の撮影時には終戦を迎え、興味本位で見学に訪れる進駐軍の兵士が多く、著名な監督のジョン・フォードやマイケル・パウエルも立ち寄ったとされています。

スタイルと音楽

この作品では、能の形式が色彩豊かに取り入れられています。タイトルの『虎の尾を踏む男達』は、能の謡曲「安宅」の一節から引用されています。劇中ではその謡曲が現代音楽としてアレンジされ、合唱団による歌唱が伴います。また、歌舞伎の音楽や祭りの囃子、神楽などの伝統的な音楽も取り入れられ、和製ミュージカルとしても評価されています。さらには『勧進帳』をパロディ化した要素も含まれており、本来弁慶が行う高難度のパフォーマンスが、道化役の榎本に任されるシーンがあります。

公開と検閲

本作はGHQによる厳しい検閲を受け、公開が認められない状態が続いていました。特に義経と弁慶の忠義の物語が「反民主主義映画」として扱われたためです。しかし、1952年3月3日にGHQの通達により上映禁止の解除がされ、同年4月24日に一般公開が実現しました。

結論

『虎の尾を踏む男達』は、黒澤明の独自の視点が光る作品であり、悲劇と喜劇を巧みに融合させた魅力溢れる映画です。日本の伝統文化の要素を取り入れつつ、戦後の混乱にも負けずに製作されたこの映画は、今も多くの人に愛されています。

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