虎臣

虎臣（こ しん）

虎臣は、明代に活躍した官僚であり、その生没年は明らかではありません。本貫は鳳翔府麟遊県にありました。彼は、その生涯を通じて、民衆の利益を最優先に行動し、不正を正すために直言を恐れない人物でした。

生涯

虎臣は成化年間に、その才能を認められ推薦を受けて太学に入学しました。ここで彼は、天下の士大夫が先聖廟を通過する際に、敬意を払うべきであると考え、輿や馬から下りるべきであるという上奏を行いました。この進言は成化帝に受け入れられ、実行に移されました。この一件からも、虎臣が単なる官僚ではなく、強い信念を持つ人物であったことが伺えます。

成化21年（1485年）、虎臣は親の世話をするために故郷に帰ることになりました。しかし、故郷である陝西は当時、飢饉に見舞われており、多くの人々が苦しんでいました。陝西巡撫の鄭時が朝廷に救済を求める上奏をしようとしていたため、虎臣はその上奏文を持って上京しました。

虎臣は、飢餓で苦しむ人々の惨状を、激しい言葉で朝廷に訴えました。その結果、朝廷から多くの救済物資を獲得することに成功しました。さらに、虎臣は「私の故郷では、長年にわたる飢饉で人々が互いに食らい合うほど困窮しており、役人たちは貪欲で残酷であるため、税や労役が公平に行われていません。役人を派遣して民家を審査させ、その状況に応じて三段階に分けて労役を科すようにしてください」と進言しました。この進言も受け入れられ、民衆の負担軽減に貢献しました。

成化23年（1487年）、弘治帝が即位すると、北京の万歳山に棕棚を建て、そこから景色を眺められるようにしようという計画が持ち上がりました。しかし、虎臣はこの計画に反対する上疏を提出し、弘治帝を諫めました。国子祭酒の費誾は、虎臣の行動が自分に災いをもたらすことを恐れ、彼を鉄鎖で堂樹の下に繋ぎました。しかし、間もなく官校が左順門に出頭するよう虎臣に伝え、彼の進言通り棕棚の建設計画が中止されたと弘治帝の意思を伝えました。この結果、費誾は大いに恥じ入り、虎臣の名は都中に知れ渡ることとなりました。

その後、虎臣は七品の官位を授けられ、楚雄府𥔲嘉知県として赴任しました。そこで、虎臣は賄賂を一切受け取らず、清廉潔白な官吏として職務を全うしました。しかし、在官中に土官によって毒殺され、その生涯を終えました。

虎臣の生涯は、常に民衆の視点に立ち、不正を恐れずに立ち向かった官僚の模範を示しています。その行動は、後世にも語り継がれるべきでしょう。

脚注

『明史』巻164 列伝第52

参考文献

『明史』巻164 列伝第52

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