蜂須賀至鎮

蜂須賀至鎮：阿波徳島藩を築いた名君

蜂須賀至鎮（はちすか よししげ）は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての武将で、阿波国徳島藩の初代藩主です。父は豊臣秀吉の家臣であった蜂須賀家政、母は生駒家長の娘である慈光院です。

生涯

1586年、至鎮は蜂須賀家政の長男として誕生しました。当初は父と共に豊臣秀吉に仕えましたが、秀吉の死後、徳川家康の養女である氏姫（敬台院）を妻に迎えたことで、徳川家との関係を深めます。

1600年の関ヶ原の戦いでは、父・家政が病を理由に在国する中、至鎮は東軍に与して参戦。戦後、その功績により家康から所領を安堵され、父から家督を譲られて阿波徳島藩の藩主となりました。さらに1603年には豊臣姓を下賜され、従四位下阿波守に叙任されています。

大坂の陣では豊臣家を裏切り、徳川方として参戦し、武功を立てました。1615年には松平姓を与えられ、淡路国も加増されて25万7000石の所領を得ています。

藩主としては、御壁書二十三箇条を制定し、撫養塩田の開発や非常食の確保に努めるなど、内政に力を注ぎました。特に、藍の生産を奨励し、藩の財政を支える基盤を築きました。また、吉野川の治水事業にも力を入れ、自らも陣頭指揮を執ったと伝えられています。

病弱であったとされ、1620年に父に先立って35歳で亡くなりましたが、その治績は後世まで語り継がれています。法名は峻徳院殿前阿州太守四品心嶽義傳大居士。跡は長男の忠英が継ぎました。

人となりと逸話

至鎮は、名君としての聡明さを表す逸話が数多く残っています。外出時のお供の役目に対して、家来を待たせることを嫌い、「町で遊んでこい」と小遣いを渡したため、多くの若い武士たちが進んでお供をしたがったといいます。この逸話は、至鎮の人心掌握術を示すものとして知られています。

また、書物を多く読み、民や部下を大切にしたとされています。藩の発展に貢献した藍の生産を奨励し、吉野川の治水事業や塩田開発を率先して行いました。特に晩年の吉野川治水事業では、自ら筆を執り、指揮を執ったと伝えられています。

関ヶ原の戦いでは、消極的な父・家政を叱咤激励し、家康のもとへ馳せ参じることを促しました。大坂の陣では、西軍への参加を促す密書に応じて大坂入城を志した父を説得し、家康に密書を提出させました。自身は、木津川口の戦いや博労淵の戦いで武功を挙げました。

系譜

父：蜂須賀家政（1558-1639）
母：慈光院（1563-1606） - 生駒家長の娘
正室：敬台院（1592-1666） - 徳川家康の養女、小笠原秀政の長女
長女：三保姫（1603-1632） - 池田忠雄正室
長男：蜂須賀忠英（1611-1652）
女子：正徳院（1614-1683） - 水野成貞正室

関連文献

* 『峻徳公略伝』蜂須賀家、1919年。

至鎮は、武将としての勇猛さと、藩主としての優れた統治能力を兼ね備えた人物でした。その功績は、今もなお、阿波徳島藩の歴史に深く刻まれています。

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