螭吻

螭吻（ちふん）について

概要

螭吻（ちふん）は、中国の中世に見られる建築装飾の一種で、龍の形を模しており、屋根の大棟の両端に置かれます。この装飾は、別名で蚩吻（しふん）や鴟吻（しふん）とも呼ばれてきました。さらに、螭吻は「竜生九子」の一つとして分類される存在でもあります。

螭吻の形状

基本的な形状としては、「屋根の大棟に龍が齧り付いた姿」で、身をくねらせながら尾を上に向け、背中には剣が突き刺さっているデザインがよく知られています。この形状は、様々なバリエーションが存在しますが、基本的なイメージは共通しています。

「螭」という漢字は、『説文解字』によると、角が無い龍や黄色い龍を指す意味があり、また『本草綱目』には蛟という水中の龍の一種として記述されています。一方で、「吻」という漢字は口や唇を意味します。これらの意味が組み合わさり、螭吻という装飾の名称が生まれました。

建築様式の進化

後漢以降、大棟の両端を上に反らせる独特の建築様式が登場し、3世紀から5世紀頃には鴟尾という形が一般化しました。鴟尾は、唐代以降、魚や龍の形状に変化し、屋根に口で齧り付くスタイルが使用されるようになりました。この変化により、蚩吻や鴟吻といった名称でも知られるようになりました。明の時代になると、蚩吻は螭吻と呼ばれるようになり、龍の要素がより強調されるようになりました。しかも、屋根飾りである脊獣と相互に影響を与えながら、その形態は多種多様化していったのです。

日本への伝播

日本には鎌倉時代に伝来し、そこでは鯱（しゃちほこ）として親しまれるようになりました。日本の神社や寺院において、鯱は屋根の装飾として重要視されています。

歴史的文献

『蘇氏演義』（9世紀末）では、漢の武帝が柏梁殿を建設した際に、火を払うための装飾として蚩尾（鴟尾）の像を設けるよう勧められたことが記されています。この蚩吻（鴟吻）は、後の魚を模した屋根飾りの変形であると説明されています。また、『唐会要』（961年）には、海に類似した魚が浪を噴き上げる様子が描かれ、漢の武帝の柏梁殿の火災に対する魔除けとしての重要性が記述されているものの、考古学的な証拠は乏しいと言われています。

竜生九子

螭吻は竜生九子の一つであり、楊慎の著作『升庵外集』には「形は獣に似、遠くを見るのを好む」と記されています。また李東陽の『懷麓堂集』では、「常に飲み込むことを好む」と紹介されています。これらの記述からも、螭吻の特徴や役割が伺えます。

まとめ

螭吻は、中国建築装飾の中で重要な役割を果たしている存在であり、その形状や背景には深い歴史が秘められています。屋根を飾るこの装飾が、文化や伝承とどのように結びついているのか考察することは、非常に興味深いテーマであると言えるでしょう。

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