鯱

鯱（しゃち）

鯱は、日本の伝説に登場する想像上の生物で、その姿は魚に似ており、頭部は虎を模しています。また、尾ひれは常に上を向き、背中には鋭いトゲが並んでいるという独特な形状をしています。この鯱を基にした装飾瓦が「鯱瓦」や「鯱ほこ」として知られ、主に建物の屋根に用いられています。

江戸時代の百科辞典『和漢三才図会』では、鯱のことを「魚虎」とも表記しています。鯱瓦は大棟の両端に取り付けられ、特に鬼瓦と同様に守り神としての役割を持っていました。火災時には水を噴出し、消火活動を助けるとされることから、信仰の対象となっていますが、これは「鴟尾」に密接に関連しています。このような装飾が一般に広まったのは、織田信長が安土城の天主に鯱を取り入れたことが起源とされています。

鯱瓦の種類と材料

近年では、陶器製やコンクリート製の鯱瓦が見られます。特に有名なものには、金鯱があり、京都の本圀寺や名古屋城の天守にその例があります。この鯱は、瓦の素材としてはもちろん、木や金属を使用されることもあります。

鯱瓦は城の天守や櫓、櫓門などに良く見られ、特に陶器で作られた鯱瓦（一般的には「鯱瓦」として知られるもの）が一般的です。最も大きな現存例は松江城の天守にあり、その高さは2.08メートルにもなります。また、青銅製の鯱もあり、高知城天守などで見かけることができます。

構造と製造方法

鯱瓦は粘土から作られており、軽量化や乾燥中のひび割れを防ぐために内部は空洞になっています。しかし、これにより非常に壊れやすいという特性を持っています。鯱瓦は棟から突起した心棒に固定され、補強材でしっかりと支えられます。

木製の鯱は、仏像を造る技法で木を組み合わせ、外側に銅板を貼って防水加工が施されています。いずれにしても、固定には心棒が使用され、補強が行われます。元々の目的は雷からの避けることにあったと言われています。

金鯱について

「金鯱」とは、金色の鯱を指し、陶器製の鯱瓦に漆を塗り、金箔を貼り付けたものが多く存在しています。岡山城の天守に設置された金箔押しの鯱瓦もその一例です。また、興味深いものには、木製の鯱に銅板の代わりに金板を使用したものもあり、名古屋城の大天守にもその姿が見られます。これらは、徳川大坂城や江戸城の天守にも使用されている構造と同様です。

鯱は、日本の文化や建築に深い影響を与え続けており、現在でも多くの場所で見ることができます。

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