蟹工船 (船)

蟹工船の歴史と実情

蟹工船（かにこうせん）とは、カニ、特にタラバガニを狙った漁船の一形態で、船内に缶詰製造工場を備えたものを指します。日本及び旧ソビエト連邦で運用されましたが、21世紀に日本で稼働しているものは存在しません。

日本における蟹工船の発展

蟹工船の起源は1916年まで遡ります。農商務省水産講習所が運営する雲鷹丸がオホーツク海での試験漁業で缶詰製造を開始。その後、1921年に和嶋貞二が商業目的での活動に成功させました。最初の蟹工船は300トン級の小型船でしたが、1923年には八木商店による3000トン級の樺太丸が操業を開始し、蟹工船の規模は大きく変化しました。

当初の蟹工船は、カニの加工専用として設計されたわけではなく、廃船となった貨物船や客船に缶詰の生産設備を搭載したものでした。漁業は母船と小型の川崎船が協同し実施されました。母船は海上に小型漁船を運び、その後小型船が獲ったカニを母船に運び込み、加工される流れが一般的でした。

漁業が行われる期間は、オホーツク海では主に4月から9月、日本海北西部では11月下旬までとされていました。このカニ缶詰は特に欧米に輸出されており、日本が主な供給国でした。

労働環境と労働者の証言

蟹工船での労働環境は厳しいものでした。1926年の新聞記事では、労働者の給与が異常なほど低かったことが記録されています。いくつかの証言によると、蟹工船での給料は陸上での10倍にも達し、一見魅力的だったものの、長時間労働や過酷な勤務条件が問題視されていました。実際、労働環境は過酷であり、睡眠不足や疲労から多くの労働者が短期間で職を辞める状況も見受けられました。

小林多喜二による小説『蟹工船』は、こうした厳しい労働環境の実態を描いています。また、1930年にはエトロフ丸での虐待が問題になり、死者が出る事態にも至りました。この船では、20時間労働が強いられ、多くの労働者が病気にかかり、最終的には死亡者も出たとされています。

ソビエト連邦における蟹工船

ソビエト連邦における蟹工船は、日本の技術移転を背景に始まりました。1928年には「第一蟹工船」が完成し、その後の発展に繋がりました。特に大戦後には、ソ連でも大型の蟹工船が建設され、その中には世界最大の航洋工場である「ボストーク」がありました。この船は、排水量32,096トンで、1日に25万個のカニ缶を生産できる能力を持っていました。

ソ連では、水産資源の生産に若干の余裕があったため、カニの缶詰生産は重視されていました。そのおかげで蟹工船の労働者たちは時に表彰されることもあり、特に共産党から高い評価を受ける者もいました。しかし、労働環境は厳格で、労働者を過酷に働かせることが目的の一部でもありました。

結論

蟹工船は、カニ漁と缶詰生産の一体運用のための画期的な漁業形態でしたが、その運営には多くの問題が伴いました。日本やソビエト連邦における蟹工船の歴史は、労働者の闘いとその苦悩の縮図でもあります。現代においても、その教訓は忘れられることなく受け継がれていると言えるでしょう。

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