血の轍 (相場英雄)

小説『血の轍』の概要

『血の轍』は、相場英雄が手掛けた推理小説で、2013年1月に幻冬舎から単行本として発行された後、同年11月に文庫版が登場しました。この作品は、警察内部における公安部と刑事部の対立をテーマにした社会派サスペンスであり、スリリングな捜査が展開されます。

あらすじ

物語の中心は、刑事部に所属する兎沢実と公安部の志水達也です。2人はかつて、所轄での同僚として互いに支え合ってきましたが、運命の変転によって袂を分かつことになります。志水が公安部に異動した後、都立戸山公園で元刑事・香川剛の遺体が発見されます。捜査一課の兎沢は、香川の死の真相を追求するために捜査に乗り出すが、公安部はこの事件が国家に関わる重大な問題であることを察知し、志水に真相の究明を命じます。

捜査を進める中で、香川が残したメモリーカードには国家を揺るがしかねない事件の報告書が含まれていることが明らかになります。報告書の内容が明るみになることを恐れる公安部が、その証拠を隠蔽しようとする一方、刑事部は真実を解明するために必死に進めていきます。こうした両部門の熾烈な攻防の中で明かされる真実は、読者に衝撃を与える仕掛けとなっています。

登場人物

• - 兎沢実: 刑事部の捜査一課に所属する警部補。優秀であるが、その性格は粗暴で強引であり、真実を追求する姿勢が際立っています。
• - 志水達也: 公安部の警部。過去に謹慎処分を受けた経歴があり、新たな公安の任務と真実の葛藤に直面します。
• - 香川剛: 元SIT刑事。都立戸山公園で発見された遺体の持ち主で、彼に関連する事実が事件の核心に迫ります。

書籍情報

本作は、単行本が2013年1月に発行され、文庫本は同年11月に出版されています。ISBNはそれぞれ9784344023208と9784344421141です。また、冷徹な人間ドラマと緊張感あふれる捜査を描いた本作は、2013年には第26回山本周五郎賞および第16回大藪春彦賞にノミネートされるも、受賞には至りませんでした。

テレビドラマ化

この作品はWOWOWの連続ドラマW枠で2014年1月から放送され、谷原章介が兎沢役を演じました。ドラマ版には原田泰造や高嶋政伸などの実力派俳優が名を連ね、脚本には篠崎絵里子、監督には小林義則が担当しました。シリーズは好評を博し、同年の8月にDVDとしてリリースされました。

『血の轍』は、その深い人間描写や緊迫したストーリー展開の中で、警察という組織の内部事情や、真実を追い求める人々の葛藤を巧みに描き出している作品です。

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