衣縫部

衣縫部（きぬぬいべ）について

衣縫部は、大化の改新以前に、衣服の裁縫を担った職業集団で、当時の大和政権に仕えていました。主に百済や呉、加羅の渡来人を中心に編成され、伊勢国や大和国に居住していたことが歴史的に確認されています。特に、日本書紀の記録からは、衣縫部の起源や発展についての詳細が伺えます。

起源と歴史

日本書紀によると、衣縫部の起源は応神天皇14年（5世紀ごろ）に遡ります。この年、百済王から「真毛津」という名の縫衣工女が貢上され、彼女が衣縫の祖とされています。さらに、その後も阿知使主や都加使主らが呉に派遣され、呉織、穴織といった技術を持つ工女たちを獲得しました。特筆すべきは、彼女たちが後に名を馳せる呉衣縫や蚊屋衣縫の祖となったことで、衣縫部の活動神話にも影響を与えました。

また、雄略天皇の時代には、呉から来た身狭村主青らが漢織や呉織とともに衣縫の工女を連れ帰り、大神神社に奉納するなど、衣縫部の技術がさらに広まっていく様子も描かれています。このように、衣縫部は歴史の中で多くの文化的交流を経て成長していった職業集団といえるでしょう。

大陸からの影響

衣縫部は主に大陸からの渡来人の子孫で構成されていましたが、同時に日本古来の血筋も存在したことが『新撰姓氏録』によって示されています。特に、「左京神別」や「和泉神別」に記載された物部氏系統の衣縫造氏や無姓の衣縫氏が挙げられています。衣縫造氏の本拠地は大阪府藤井寺市にあり、ここには飛鳥時代前期に創建された衣縫廃寺も存在しています。

衣縫造孔子という人物は、703年に名字「連」を拝受したことが記録されており、これは衣縫部の影響力や重要性を示す一例です。

律令制度とその後

律令制度が整備されると、衣縫部に関する組織も充実しました。大蔵省管轄の縫部司や中務省管轄の縫殿寮などが設けられ、公式な裁縫の役割を担うことになりました。これにより、衣服製作の技術は一層洗練され、国家の重要な業務として位置づけられました。

衣縫部は、日本の歴史の中でも重要な役割を果たしており、その活動は単なる衣服の裁縫を超えて、文化や技術の交流を促進させる意味合いを持っていました。衣縫部を通じて、古代日本における多様な文化的背景が融合し、豊かな国の発展に寄与したことは間違いありません。

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