表決

国会の意思決定：表決、採決、そして議決

国会における意思決定は、大きく分けて「表決」と「選挙」（役員選挙や内閣総理大臣指名選挙など）の2種類に分類されます。本稿では、主に議会の意思決定において重要な役割を担う「表決」について詳述します。

表決とは、議長によって提示された議案に対して、出席議員が賛成または反対の意思表示を行い、賛成多数か反対多数かを決定する手続きです。この手続きに入ることを「採決」、そして表決の結果によって議会の意思が確定することを「議決」と言います。

国会における表決の基本原則

日本の国会では、表決に関するいくつかの基本原則が存在します。まず、表決に参加するには、表決の際に議場にいることが必須です。また、表決に条件をつけることや、一度行われた表決の結果を修正することは認められていません。これらの原則は、議会の議事運営を円滑に進めるために不可欠です。

理想的には、すべての議員が意見を一致させる「全会一致」が望ましいですが、現実的には難しいケースが多いです。そのため、多くの場合、議決は「多数決」によって行われます。

表決の手続き

議長は、表決を行う際に、まず議案を宣告します。宣告後、議案に関する発言は認められません。日本の国会では、衆議院議長は表決には参加しませんが選挙には参加する一方、参議院議長は表決にも選挙にも参加しません。議長が表決に参加するかどうか、また議長決裁との関係性については、学説によって異なる見解が存在します。

採決の方法

日本の国会では、以下の4種類の採決方法が用いられています。

1. 満場一致

全員が賛成していることが明らかな場合に用いられる方法です。

2. 異議なし採決

議院運営委員会で全会派が賛成を表明し、他の採決方法の要求がない場合に用いられます。議長が「ご異議ございませんか？」と問いかけ、「異議なし！」と議員らが叫び、議長が「ご異議無しと認めます」と宣言することで可決となります。これは発声採決の一種ですが、賛成・反対が同時に発声される点が特徴です。そのため、党議拘束に従わない議員や無所属議員の意見は聞き取りにくく、議事録上は満場一致と扱われる可能性があります。通常、議事日程等の比較的軽微な議案に用いられます。

3. 起立採決

衆議院では原則として起立採決が行われます。議長が賛成者の起立を求め、起立者を賛成、着席者を反対とみなして賛否を判定します。実際には、会派単位で座席が区切られているため、迅速な議決が行われます。賛否が不明瞭な場合、または出席議員の五分の一以上が異議を申し立てた場合は、記名投票が行われます。

4. 記名投票

各議員の氏名入り投票用木札（白色が賛成、青色が反対）を用いて投票する方法です。投票中は議場が閉鎖されます。これは、投票に時間がかかるため、出席議員数を固定する必要があるためです。投票結果の会議録への記載も義務付けられています。議事妨害の一種である「牛歩戦術」はこの記名投票を悪用したものです。

5. 押しボタン式投票（参議院のみ）

参議院に導入されている方法で、議員一人ひとりの投票内容を記録できます。迅速性と正確性を兼ね備えていますが、議長が必要と判断した場合や出席議員の五分の一以上の要求があれば、記名投票が行われます。

その他の表決方法（諸外国）

ディヴィジョン（イギリスなど）

イギリスや英連邦諸国などで用いられる方法です。賛成派と反対派はそれぞれ別室に移動し、それぞれの室の議員数をカウントすることで賛否を決定します。カナダ下院では、別室への移動は行わず、賛成派と反対派をそれぞれ起立させ、氏名を点呼する形式となっています。

点呼投票（アメリカ合衆国など）

アメリカ合衆国議会などで用いられる方法です。議員の名前が読み上げられ、口頭で賛否を表明することで投票が行われます。近年は電子投票が主流となっていますが、合衆国上院では点呼投票が未だに行われています。

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