裁断橋

裁断橋とは

裁断橋は、かつて愛知県名古屋市熱田区に存在した橋で、精進川に架けられていました。この橋は、その擬宝珠に刻まれた銘文によって知られており、日本百名橋の番外にも選ばれています。

概要

裁断橋の歴史は古く、永正6年（1509年）の『熱田講式』にはすでにその名が見られます。特に有名なのは、擬宝珠に刻まれた銘文にまつわる物語です。この銘文には、天正18年（1590年）の小田原征伐で亡くなった堀尾金助という18歳の男性の菩提を弔うため、母親が息子の33回忌に、彼を最後に見送った橋を架け替えたことが記されています。

伝承によれば、母親は橋を二度架け替えたとされています。息子の33回忌の架け替えは二度目のものでしたが、母親はそれを見ることなく亡くなりました。そのため、養子の堀尾類右衛門が元和8年（1622年）に橋を架け替え、その際に「息子（金助）の供養のために、この書き付けを見る人は念仏を唱えてほしい」という母親の願いが擬宝珠に刻まれたと伝えられています。

しかし、これらの伝承を裏付ける同時代の史料は擬宝珠以外に存在せず、銘文以上の内容は後世の創作とする見方もあります。この擬宝珠の銘文は、日本女性三名文の一つに数えられています。

近代の裁断橋

1904年（明治37年）に橋の架け替えが行われましたが、1910年（明治43年）の川筋の付け替えに伴い、橋があった場所も1926年（大正15年）に埋め立てられました。しかし、擬宝珠のある4本の橋柱は路傍に残されました。1945年（昭和20年）の名古屋大空襲で周辺は焼失しましたが、擬宝珠は焼失を免れました。

1953年（昭和28年）には、橋のたもとにあった姥堂境内の池に規模を縮小して再建されました。しかし、1993年（平成5年）に姥堂が再度建て直され、裁断橋があった池も埋められたため、当時の面影は失われています。橋についていた擬宝珠は、名古屋市の文化財に指定されていますが、損傷のため現在は名古屋市博物館に収蔵されており、現地にあるものは複製です。

堀尾氏の城跡である大口町の堀尾跡公園には、五条川を跨ぐ形で、かつての裁断橋が焼失する前の姥堂の山門と共に再現されています。これにより、往時の姿を偲ぶことができます。

関連情報

裁断橋の近くには、「都々逸発祥の碑」が建てられています。この碑は、都々逸という日本の伝統的な歌謡が生まれた場所を示すものです。

参考文献

堀尾遺跡顕彰会・姥堂裁断橋保存会 『新編 熱田裁断橋物語 -母の願い-』 1976年
名古屋市教育委員会 『名古屋の史跡と文化財（新訂版）』 1997年
大口町歴史民俗資料館 『研究紀要VI』 2008年
『尾張名所図会』 第四巻　裁断橋、1844年

外部リンク

堀尾金助と裁断橋（熱田区） - 名古屋市
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