西ボスニア自治州

西ボスニア自治州：幻の自治地域

西ボスニア自治州（ボスニア語: Autonomna Pokrajina Zapadna Bosna）は、1993年から1995年の短期間、ボスニア・ヘルツェゴビナに存在した未承認の自治地域です。ヴェリカ・クラドゥシャを首都とし、その周辺地域を支配していました。

歴史的背景

成立

1993年、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の最中、地元の分離主義者フィクレト・アブディッチがボスニア・ヘルツェゴビナ中央政府に対する反抗を起こし、ヴェリカ・クラドゥシャとその周辺5つの村を含む地域を分離独立させました。これが西ボスニア自治州の始まりです。

紛争下の動き

自治州は、ボスニア・ヘルツェゴビナ中央政府に反し、セルビアを中心とするユーゴスラビアやクロアチアと協力関係を築きました。1994年にはボスニア・ヘルツェゴビナ政府軍（ARBiH）に包囲されるも、その後ARBiHを駆逐し、自治州を維持しました。

西ボスニア共和国への改称と終焉

1995年、西ボスニア自治州は西ボスニア共和国に改称。同年、クロアチア軍によるクライナ・セルビア人共和国への侵攻（嵐作戦）の際、クライナ・セルビア人共和国の最後の防衛線として機能しました。しかし、その直後、虎作戦によってクロアチアとボスニア・ヘルツェゴビナ政府の合同部隊に解体され、ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦に編入されました。

その後

アブディッチはクロアチア市民権を得てクロアチアで過ごしましたが、後に逮捕され、ボスニア・ヘルツェゴビナ政府側についたボシュニャク人に対する戦争犯罪の嫌疑で訴追され、有罪判決を受けました。

経済

西ボスニア自治州の経済は、ヴェリカ・クラドゥシャに拠点を置くアグロコメルツに大きく依存していました。セルビア人勢力およびクロアチア人勢力との協定を通じて、西ボスニアとクロアチア間の貿易が行われ、西ボスニアはクロアチアのリエカ港に免税貿易地域を獲得しました。

関連項目

ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦
スルプスカ共和国
ヘルツェグ＝ボスナ・クロアチア人共和国
クライナ・セルビア人共和国

西ボスニア自治州は、紛争の時代に生まれた、短命な自治地域でした。その存在は、ボスニア・ヘルツェゴビナの複雑な歴史を象徴するものとして、記憶されています。

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